ローマの闘技場でクマが戦っていたことを示す可能性のある証拠が見つかる

古代ローマ人にとって、円形闘技場で開催される見せ物はスリリングな娯楽の1つでした。闘技場では奴隷や罪人同士で闘うこともあれば、人間と獣が闘うこともあったとされています。新たな研究で、闘技場にヒグマが持ち込まれていた可能性を示す証拠が見つかりました。
A spectacle of the Roman amphitheatre at Viminacium: multiproxy analysis of a brown bear skull | Antiquity | Cambridge Core
https://www.cambridge.org/core/journals/antiquity/article/abs/spectacle-of-the-roman-amphitheatre-at-viminacium-multiproxy-analysis-of-a-brown-bear-skull/FB967A5B1441557B31D86CF1A2377F9F
The Skull of an Ancient Brown Bear Tells a Story of Brutality and Abuse at the Hands of Roman Entertainers
https://www.smithsonianmag.com/smart-news/the-skull-of-an-ancient-brown-bear-reveals-its-abuse-at-the-hands-of-roman-entertainers-180987310/
Fossil skull provides first direct evidence that bears fought in Roman amphitheaters
https://phys.org/news/2025-09-fossil-skull-evidence-fought-roman.html
2016年、セルビアにあるヴィミナキウム円形闘技場付近の建物の発掘調査で、クマの頭蓋骨の断片が見つかりました。
1世紀に軍事拠点として創設されたヴィミナキウムは、わずか数百年で主要都市へと発展し、人口は最大4万人に達したことが分かっています。ローマ帝国の他の都市同様、ヴィミナキウムには円形闘技場が作られ、市民は剣闘士同士の試合を日々の娯楽としました。
ローマ人は紀元前3世紀に人と獣との闘いを始め、シチリアや北アフリカで象、ワニ、トラ、ライオンなどの野生動物を捕獲し、ローマへ移送したとされています。移送後、多くの動物は動物園に収容され、飢えさせられて服従させられ、虐待的な訓練で芸を覚えさせられました。その後、ローマ人は獣を円形闘技場に放ち、獣と人を闘わせました。

記録として残る獣と人との闘いについて、これまで決定的な証拠はあまり見つかっていませんでしたが、2025年に入って初めて動物との闘争を示す最初の骨格証拠が発見されています。イギリスで発掘された剣闘士の骨盤にライオンの噛み跡が確認されたのです。
このほか、古代の記録には闘技場にヒグマを持ち込んだ事例が数多く記されており、人間と闘わせていたことが示唆されていましたが、やはりこうした活動の物的証拠はこれまで見つかっていませんでした。

by Jerzystrzelecki
ところが、発見されたクマの頭蓋骨を調査したところ、このクマが闘技場で闘わされていた可能性があることが分かりました。
このクマは約1700年前に生きていた6歳のオスのヒグマで、前頭骨に骨折を負い、治癒の兆候はあるものの感染症を併発しており、骨髄炎を引き起こしていたことが明らかになりました。
研究者らは、このヒグマは長い槍のような鈍器で外傷を負った可能性があり、その傷が元となった感染症で死亡した可能性が高いと考察しています。
また、ヒグマの歯と顎に損傷があり、犬歯が過度に摩耗していたことも明らかになりました。これはおそらく檻の鉄棒を噛んだことによるもので、飼育下のクマによく見られる行動だとのこと。研究者らは「この行動は、不安に加え、栄養不足と、自然の環境で歯を磨く機会が欠如したことによって引き起こされた可能性がある」と記しています。

これらの証拠から、このヒグマは長期間飼育されており、闘技場で複数の見せ物に参加していた可能性が高いと考えられています。
ベオグラード考古学研究所の考古学者で筆頭著者のネマニャ・マルコヴィッチ氏は、「熊が直接闘技場で死亡したかは断定できないが、外傷は興行中に発生し、その後の感染症が死因に大きく寄与した可能性が高い」と話しました。
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in サイエンス, 生き物, Posted by log1p_kr
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