名作ゲームブックシリーズに携わった作家が「90年生きてきて学んだ9つの教訓」について語る

1979年から1998年までにアメリカの出版者から発行された「きみならどうする?(Choose Your Own Adventure)」は、二人称視点で書かれた作品を読者が主人公になって選択肢を選び、選択に応じて物語の展開が変わるゲームブックシリーズの先駆けとなった作品です。そんな「きみならどうする?」の原案と第1作目の執筆に携わった作家のエドワード・パッカード氏が、90歳を迎えた人生を振り返る中で感じた「9つの教訓」を語っています。
Edward Packard: Choose Your Own Adventure concept creator; author
https://edwardpackard.com/

(PDFファイル)Nine Things I Learned in Ninety Years - Edward Packard
https://edwardpackard.com/wp-content/uploads/2025/09/Nine-Things-I-Learned-in-Ninety-Years.pdf
パッカード氏は1931年生まれで、2025年10月時点で94歳です。パッカード氏はブログに投稿した文書の中で、「私は90歳を迎えるころ、これまでの人生を振り返り、『なんであんなに道を踏み外してばかりいたんだろう』と苦笑していました。ここまでどうにか生き延びてきたのは、努力や決意、賢い助言のおかげではなく、ほとんど運のおかげです。振り返ると、記憶に残る失敗の数々は、その後の結果がちょっとしたものから破滅的なものまでさまざまでした。しかし、もし私がもっと早い段階で『基本的な原則』を身につけていたら、きっとそれらの失敗を避けられたはずだと思うのです」と語った上で、「90年以上の人生でようやく理解した9つの原則」を共有しました。
1:自分をつくりあげること
アメリカの哲学者であるクリスティーン・コースガードは著書「Self-Constitution: Agency, Identity, and Integrity(自己構成:主体性、アイデンティティ、そして完全性)」の中で、一貫性があって全体としてまとまっている状態、すなわち「誠実さ」を持って「自己構成」することの重要性を説いています。「良い人間」であるためには、イマヌエル・カントの思想で言う「普遍的な法」に従う必要がありますが、その枠組みを作るためには、客観的に証明できていない道徳の規範を理解する必要があります。
しかし、パッカード氏によると、「苦しみや不幸を生むものは悪く、喜びや幸せを生むものは良い」「怒りや憎しみなどの感情は悪く、喜びや思いやりといった感情は良い」というシンプルな原則は存在しているということを道徳の土台とできるとのこと。コースガードが「人の行動は、自分自身を統治するルールから生まれなければならない。そうでなければ、衝動に支配されてしまう」と述べたように、自分自身に一貫性を持たなければ、人生は混乱だらけになります。その上で、「統一された自己を誠実な意味で作り上げることで、自信を持ち、心の揺らぎに強くなり、無意味な衝動に惑わされなくなります」とパッカード氏は述べています。

2:目を覚まし、意識して生きること
「もし目を覚まして意識がはっきりしていなければ、それは夢遊病者のように生きているのと同じです」と述べた上で、パッカード氏は「自分がやっていることの目的や、その行動が自分や他人にどんな影響を与えるのか考えること」の重要性を説いています。夢遊病的に生きること、すなわち選択や行動の意味を考えないことは、不都合な事実からの手軽な逃避手段になります。しかし、それが習慣になると、「このまま進むと破滅だ」と誰にでもわかるようなタイミングで、自分だけが見落としてしまう可能性があります。
3:他人が何を考え、感じているかを考える
他人とのやりとりにおいて、相手がどのように感じ、どのように考えているのかを考慮することが重要です。相手がどのように感じているか考慮するには共感力が必要で、相手がどのように考えているのかを考慮するには「心の理論」と呼ばれる認知的能力を働かせる必要があります。パッカード氏は、自分を良く見せようと発言した結果失敗に終わった経験を語りながら、「他人とのやり取りに関する意思決定は、相手が自分の言動にどのように反応するかを考えて行うべきだと気づくようになったのです」と述べています。
4:幸福を自分の心の基本状態にする
パッカード氏は、ダライ・ラマの「私たちが日常生活の中で他者への愛と、他者の権利や尊厳への敬意を守っている限り、学識のあるなしにかかわらず、仏や神を信じているかどうか、あるいは何らかの宗教を信仰しているか、あるいはまったく信仰していないかにかかわらず、他者への思いやりを持ち、責任感から自制をもって行動する限り、私たちは間違いなく幸福である」という投稿をSNSで呼んだ時から、「心の基本状態は『幸福』である」と信じるようにしたそうです。幸福を心の基本状態にし続けるためには、暖かさや愛情を受け取るだけではなく、他人に与えることが必要だとダライ・ラマは説いています。
5:永遠的な視点を求める
17世紀の哲学者であるバールーフ・デ・スピノザは、自分自身のエゴの視点から他人の視点へ、さらに他人の視点を超えて、「神」ないし「自然」にあたる宇宙全体の視点へと考え方を拡張することで、「広範な人生と世界の需要を獲得できる」と結論付けました。永続的で視野を広く持った視点は、個人の利益追求や感情的な満足を妨げるものではなく、むしろ平静と喜びをもたらすための前提条件となります。
6:自己欺瞞(ぎまん)に備えること
自己欺瞞とは、決定や結論が歪んだ信念、偏った感情状態、願望的思考などによって左右される、あるいは影響を受ける状態を指します。典型的な例として確証バイアスがあり、人は仮説や信念を抱いた際に、その意見を補強する情報ばかり集め、反証する情報を無意識的に無視ないし過小評価してしまうという傾向があります。確証バイアスは賢い人でも避けることは難しく、むしろ高度な知的能力によって強引な理論を組み立てることができてしまいがち。パッカード氏も自己欺瞞を避ける重要性を理解しつつも、完全に対策することは難しいとした上で、「自己欺瞞に備えること」の重要性を強調しました。
7:死と向き合う方法
古代ギリシャ・ローマのストア派は、死を事前に熟考することで、突然の死に対応できると考えていました。一方で、スピノザは死を恐れるのではなく、永続的な視点を持つことで、死に対して平静や自己抑制を養うことができると考えました。パッカード氏は「スピノザの考え方を好みます」と語っています。
8:運が果たす非常に大きな役割
俳優、劇作家、エッセイストのウォーレス・ショーンは著書「Night Thoughts」の中で、「比較的平穏な生活を送り、爆撃や嫌がらせに遭わず、恐怖の中で暮らすこともなく、1日に2〜3回のまともな食事がとれてきたなら、それだけであなたは運が良い。そして人生で多くの成果を達成できたなら、それは少なくとも大部分が、与えられた機会に恵まれたこと、道が整えられたこと、そして重要な時期に誰かに助けられたことによるのです」と書いています。遺伝的な要素から育った環境、性格を形成した出来事など、運や偶然に左右されることは想像以上に多いです。パッカード氏は「もし運に恵まれていたなら謙虚さと寛大さを持つべきであり、運に恵まれなかったなら自分に対する思いやりを持つのが大切です」と述べています。

9:今自分が持っているものを考える
一般的な原則として、積極的に行動し、イニシアチブを取り、消極的にならないことなどは重要です。しかし、ときには一度立ち止まって、じっくり考えることも大切だとパッカード氏は述べています。パッカード氏は「失われたり欠けたりして初めて、その価値を痛感する。そして、所有している間には見えなかった美徳に気づくのである」というウィリアム・シェイクスピアの文章を引用しつつ、後になって「ほんの一瞬考えればよかったのに」と思わないように、じっくり考えてみることの重要性を語りました。
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in メモ, Posted by log1e_dh
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