アルツハイマー病治療薬が自閉症の子どもの社会的能力を改善する可能性があると臨床試験で示される

自閉症スペクトラム症(ASD)は対人コミュニケーションや社会的行動に困難を抱える発達障害です。マサチューセッツ総合病院やハーバード大学の研究チームが行った臨床試験では、アルツハイマー病治療薬を投与されたASDの子どもの一部が、コミュニケーションや社会的行動の改善を示したと報告されました。
Memantine to Treat Social Impairment in Youths With Autism Spectrum Disorder: A Randomized Clinical Trial | Adolescent Medicine | JAMA Network Open | JAMA Network
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2839518

Alzheimer's Drug Shows Surprising Benefits For Some Kids With Autism : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/alzheimers-drug-shows-surprising-benefits-for-some-kids-with-autism
メマンチンは脳内のグルタミン酸受容体を阻害する薬剤であり、中度~重度のアルツハイマー病治療薬としてヨーロッパやアメリカ、日本などで承認されています。
神経伝達物質であるグルタミン酸の濃度が過剰になると毒性を示すことがあり、脳内のグルタミン酸濃度を低下させることで神経変性疾患の進行を遅らせることができるとのこと。
グルタミン酸受容体が特に豊富な脳領域は、社会的プロセスや感情認識に関与する前帯状皮質前部です。いくつかの証拠は、ASD患者の前帯状皮質前部におけるグルタミン酸のバランスが崩れる場合があることを示唆しており、これがコミュニケーションや社会的相互作用に関する行動や症状を説明できる可能性があります。

2017年の臨床試験では、メマンチンの摂取がASDの子どもに大きな変化を及ぼさないことが示されています。しかし、今回マサチューセッツ総合病院やハーバード大学の研究チームは、子どもたちの前帯状皮質前部におけるグルタミン酸濃度を評価すると共に、より高用量のメマンチンを投与する新たな臨床試験を実施しました。
新たな臨床試験では、知的障害を持たない8~17歳のASDの子ども33人を対象に、12週間にわたって薬剤を投与しました。子どもたちは2つのグループに分けられ、実験群の子どもたちは1日20mgのメマンチンを服用し、対照群の子どもたちには偽薬を服用しました。
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