サイエンス

ダイエットする前に知っておくべき「5つのこと」を専門家が解説


肥満は遺伝や生物学的特性、環境、社会経済的要因などが複雑に絡み合った結果として生じるものですが、しばしば「太っているのは自己責任」といわれがちです。多くの人々が健康や美容のためにダイエットに取り組む中で、リンカーン大学の生理学上級講師を務めるレイチェル・ウッズ氏が、ダイエットについて知っておくべき「5つのこと」について解説しています。

Five things I wish everyone knew about weight loss – by an expert in nutrition
https://theconversation.com/five-things-i-wish-everyone-knew-about-weight-loss-by-an-expert-in-nutrition-262100


◆1:ダイエットは生物学的な性質に反している
イングランドでは肥満対策が国家的な課題だと認識された1990年代以降、数々の肥満対策が導入されてきましたが、依然として肥満率は減少していません。この事実は、肥満の責任は個人にあるとする従来のアプローチが機能していないことを示唆しています。また、仮に減量が成功したとしてもその効果は長続きせず、多くの人がリバウンドしてしまい、一度肥満になった人が標準体重を維持できる割合は非常に低いことがわかっています。

ウッズ氏はこの理由のひとつとして、人間の体はエネルギー摂取量を減らして体重が減ると代謝が遅くなり、食欲を増進させるホルモンであるグレリンを分泌する「代謝適応」が起こることを挙げています。この生物学的反応は、豊作と飢餓を繰り返すのが当然だった狩猟採集民の時代には理にかなったものでしたが、高カロリーで超加工食品が安価で手に入る現代では減量を困難にする原因となっています。

◆2:体重管理がうまくいくかどうかは意思の力の問題ではない
比較的楽に体重を安定させられる人もいれば、体重がすぐに戻ってしまう人もいますが、その違いは意思の力だけの問題ではありません。体重はさまざまな要因によって左右されるものであり、たとえば遺伝子はカロリーの燃焼速度や空腹感、食後の満腹感などに影響を及ぼしています。空腹感を感じやすい体質の人や高エネルギー食品を渇望しやすい人にとって、減量はそうでない人よりも難しいものです。

さらに環境的・社会的要因もダイエットに影響します。ダイエットに役立つ「健康的な食事を準備する」「活動的に過ごす」「十分な睡眠を取るだけの時間を確保する」といった行動には、お金やサポートといったリソースが必要ですが、誰もがこうしたリソースを持っているわけではありません。ウッズ氏は、「こうした複雑な側面を見過ごし、体重は単なる自己管理の問題だと決めつけると、偏見を助長してしまいます」と指摘しています。


◆3:カロリーだけがすべてではない
理論的には、摂取カロリーを消費カロリーよりも低く抑えれば減量できますが、これを実行するのは困難です。まず、食品のカロリー表示はあくまで推定値であり、1日のエネルギー必要量や食品から吸収するカロリー量も日によって異なる可能性があるとのこと。さらに、同程度のカロリーが含まれているビスケットとゆで卵でも、それぞれ空腹感や消化、エネルギーレベルへの影響はまったく異なります。

ウッズ氏は、「カロリーはどの食品から摂取しても同じ」という誤解が、シェイクだけを飲んだり特定の食品群を完全にカットしたりする極端なダイエット法を助長していると指摘。現実的でバランスの取れたダイエット法は長期的な変化に焦点を当てるものであり、「自然食品をより多く食べること」「テイクアウトの食事を減らすこと」「アルコールを控えること」「全体的な健康をサポートする習慣を身につけること」などが大事だそうです。

◆4:運動は健康にいいが必ずしもダイエットに役立つわけではない
運動をすればするほど痩せるという考えの人もいますが、人間の体はエネルギーを節約することに優れています。激しい運動をした場合、無意識にその後の日常の運動量を減らしたり、空腹感が増して食べ過ぎたりして、結果的に消費カロリーを相殺してしまうことも少なくありません。実際に研究では、運動量を増やしてもその分だけ1日のカロリー消費量増えるわけではないことが示されています。運動量が増えると体はより効率的になり、他の場所でのエネルギー消費量を減らして適応するとのこと。

とはいえ、運動には心血管系の健康を促進したり、メンタルヘルスを改善したり、筋肉量を維持したり、代謝機能を高めたり、骨を強化したり、慢性疾患のリスクを低下させたりするなどのメリットがあります。そのためウッズ氏は、「体重計の数値が変わらなくても、運動は健康と生活の質を向上させる最も強力な手段のひとつです」と述べました。


◆5:健康改善には必ずしも減量が必要ではない
確かに意識的に体重を減らすことで、心臓病いくつかのがんなどのリスクを軽減できることが示されていますが、食生活を改善したり運動量を増やしたりすることで、体重が同じままでもコレステロール値や血圧、血糖値、インスリン抵抗性などが改善されることもわかっています。

ベネット氏は、「健康になるために体重を減らす必要はありません」「体重計に大きな変化が見られない場合は、目標を変える方が効果的かもしれません。数字を追いかけるのではなく、行動に焦点を当てましょう。体に栄養を与え、好きなように定期的に運動し、よく眠り、ストレスを管理するなどです。体重はパズルの1ピースに過ぎません。健康はそれ以上の要素から成り立っています」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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