歩き方を少し変えるだけで膝関節炎の痛みを軽減できる可能性

膝関節炎に悩む人の歩き方を調べ、歩くときの足の角度を微妙に調整することで、市販の痛み止めと同程度に痛みを軽減したという調査結果が報告されました。
Personalised gait retraining for medial compartment knee osteoarthritis: a randomised controlled trial - The Lancet Rheumatology
https://www.thelancet.com/journals/lanrhe/article/PIIS2665-9913(25)00151-1/abstract
How small changes in walking technique may help treat knee osteoarthritis
https://medicalxpress.com/news/2025-08-small-technique-knee-osteoarthritis.html
ニューヨーク大学ランゴーン医療センター、ユタ大学、スタンフォード大学の研究者チームが主導した新たな研究では、歩行時の足の向きを変えることで、運動時に関節へかかる過剰な負荷を軽減できるという仮説が検証されました。
研究チームは、まず軽度から中等度の変形性膝関節症を持つ男女68名にトレッドミル(ランニングマシン)で歩いてもらい、歩行パターンをシミュレートして膝の内側に生じる最大負荷を算出しました。
続いて、研究チームは被験者の足の位置を変えた歩行パターンを4種類(内側または外側に5度または10度傾ける)考案し、どのパターンが最も負荷を軽減するのかを推定しました。

その後、患者は「負荷を軽減する歩き方を訓練するグループ」と「今まで通りの歩き方をするグループ」へランダムに振り分けられました。
訓練から1年後に被験者の痛みのスコアとMRI検査を実施した結果、歩行パターンを調整した被験者は膝への最大負荷が4%軽減されていたのに対し、通常の歩行パターンを維持した被験者は負荷が3%以上増加していたことが分かりました。
痛みのスコアでは、歩行パターンを調整した被験者は10段階評価で痛みが2.5ポイント軽減し、市販の鎮痛剤と同等の効果を示しました。歩行パターンを変更しなかった被験者でも痛みの軽減が見られましたが、そのスコアは1ポイント強に留まりました。

MRI検査では、歩行パターンを調整した訓練を受けたグループは膝の内側部分の軟骨変性が遅くなったことが示唆されています。研究の共同筆頭著者であるヴァレンティーナ・マッツォーリ氏は「今後の研究で結果を確認する必要はあるものの、今回の手法が外科手術を先延ばしにできる可能性を示唆しています」と述べました。
マッツォーリ氏によると、歩き方を調整するという研究は過去にも存在するものの、全被験者に同じ歩き方をさせて対照群との比較を行わなかったものや、追跡期間が1カ月と短かったものばかりで、今回のような個人に合わせた歩き方を指導するものはなかったとのこと。また、今回の研究では専門の施設で歩き方のパターンが検査されましたが、スマートフォンで負荷を推定するAIアプリが既に存在するため、導入は容易だといいます。

マッツォーリ氏は「膝への負担を軽減する最適な角度を発見できるよう支援することは、変形性関節症に対処する簡便かつ低コストな方法となり得ます。今回の結果は、画一的なアプローチではなく個人に合った治療が重要であることを強調しています」と指摘しました。
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in サイエンス, Posted by log1p_kr
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