サイエンス

不眠症を悪化させているかもしれない「睡眠に関する5つのアドバイス」について専門家が解説


睡眠の質が高まると心血管の健康、免疫機能、脳の健康、精神的な幸福感が高まります。多くの人が睡眠の質を高めるべくさまざまな「睡眠に関するアドバイス」を取り入れていますが、中には不眠症を悪化させてしまうものもあると、睡眠セラピストでありロンドン大学ロイヤル・ホロウェイで心理学の研究を行っているカースティ・ヴァント氏が解説しています。

Five pieces of sleep advice that could be making your insomnia worse – a sleep therapist explains
https://theconversation.com/five-pieces-of-sleep-advice-that-could-be-making-your-insomnia-worse-a-sleep-therapist-explains-261682


睡眠の質を高めるのに役立つのが「睡眠衛生」です。睡眠衛生とは、「就寝時間を規則正しく守る」「寝る前にディスプレイを見ない」「カフェインの摂取を控える」などの良質な睡眠を促す習慣や環境要因を指します。しかし、睡眠衛生の中には不眠症を悪化させてしまうものもあるそうで、ヴァント氏が解説しています。

◆1:ベッドで過ごす時間を増やす


なかなか眠れない時は、寝不足を取り戻そうと早く寝たり、寝れなくてもベッドの中で横になったりすることがあります。しかし、この戦略は往々にして裏目にでるとヴァント氏は指摘。ベッドの中で起きている時間が長くなればなるほど、ベッドと睡眠の精神的な結びつきは弱まり、ベッドとフラストレーションの結びつきが強くなってしまうとのこと。

逆にベッドにいる時間を制限し、いつもより少し遅く寝て、毎日同じ時間に起きるようにすることで、睡眠圧(体の自然な睡眠への衝動)が強化され、ベッドが覚醒ではなく睡眠の合図として認識しやすくなります。

◆2:ディスプレイを絶対に避ける


「寝る前にディスプレイを見ないように」とよく言われます。これはディスプレイから発せられるブルーライトが、睡眠を調整するホルモンであるメラトニンの分泌を抑制するためです。しかし、「このアドバイスはあまりにも単純すぎる」とヴァント氏は指摘。

実際には不眠症の人は眠れないからこそ携帯電話に手を伸ばしてしまう可能性があります。暗闇の中で何も考えずに横たわっていると、不安や考えすぎで最悪の状況に陥り、不眠症を悪化させてしまう可能性があります。


ディスプレイを完全に禁止するのではなく、戦略的に活用することを検討することをヴァント氏は推奨しました。落ち着いた刺激のないコンテンツを選び、ナイトモードを活用し、無意識にスクロールしないようにし、静かなポッドキャストや穏やかなドキュメンタリーを視聴してリラックスすることが最適な気分転換になります。

◆3:カフェインを完全に断つ


カフェインは眠気を促す神経伝達物質であるアデノシンを阻害します。しかし、カフェインの代謝は人それぞれ異なり、代謝速度は遺伝的要因が影響するものです。

朝にコーヒーを飲むと、睡眠惰性(起床時の眠気)が抜けて活動的になり、健康的な睡眠覚醒リズムが維持できると感じる人もいるかもしれません。カフェインに敏感な人は、日中の後半にカフェインを摂取することは避けるのが賢明かもしれませんが、「完全に断つ必要はない」とヴァント氏。重要なのは個人個人の反応を理解することであるとヴァント氏は主張しました。

◆4:睡眠を最適化しようとし過ぎる


ウェアラブルトラッカーやマットレス、睡眠促進剤などあらゆるものを網羅する睡眠関連グッズの市場は4000億ポンド(79兆6000億円)にも達するそうです。これらの睡眠グッズは善意に基づいたものかもしれませんが、完璧な睡眠を得ようとし過ぎると不安に駆られてしまうもので、これは「オルソムニア」と呼ばれ現代社会ならではの睡眠障害のひとつとして知られています。

睡眠は消化や血圧と同じように自律神経機能であることを覚えておく必要があるとヴァント氏は記しており、「健康的な習慣を通して睡眠に影響を与えることはできますが、強制することはできません」と主張。睡眠の質にこだわりすぎると、逆に睡眠の質が悪くなることもあるため、睡眠をあまり気にせず、体が本来の働きをするように任せるのが最善策であるとアドバイスしています。

◆5:毎晩同じ睡眠時間を期待する


健康的な睡眠は決まった時間ではなく、私たちの生活に左右される動的なものです。ストレス・健康状態・年齢・環境さらには子育ての責任といった要因が睡眠に影響を与えます。例えば人間の乳児は数時間おきに起きるため、親はその度に授乳する必要があります。これに合わせて母親の睡眠パターンも変化するため、睡眠における柔軟性は常に生存に必要な特性です。

睡眠に厳格で一貫性を求めるのは、非現実的な期待を抱くことになりかねないとヴァント氏は指摘。さらに、「睡眠セラピストとして長年働いてきて、睡眠特権、つまりぐっすり眠れる能力と機会が、睡眠に関する議論を歪めてしまうことに気づきました。不眠症の人に『とにかく寝て』と言うのは、摂食障害の人に『とにかく健康的な食事をして』と言うようなものです。複雑な問題を単純化しすぎているのです」と語っています。

睡眠衛生文化に深く根付いた最も有害な信念は、「睡眠は完全に私たちのコントロール下にある」という考えや、「睡眠不足の人は何か間違ったことをしているに違いない」という考えです。睡眠に悩んでいるなら、睡眠衛生以外にもエビデンスに基づいた治療法があります。不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)は、心理療法のゴールドスタンダードです。オレキシン受容体拮抗薬(スボレキサント、レンボレキサント、ダリドレキサントなど)などの新しい薬も利用可能になっています。

ヴァント氏は「不眠症はよくある病気で、治療可能です。そして、それはあなたのせいではありません」と語りました。

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in サイエンス, Posted by logu_ii

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