ソフトウェア

「広告ブロッカーは違法ではない」という判決をドイツの裁判所が覆す、Mozillaも「拡張機能が不便になるかも」と警告


インターネット上のサイトやアプリを埋め尽くす広告を削除して快適なブラウジングを可能にする「広告ブロッカー」は、広告から収入を得る運営者にとっては収益を減らすものであるため、違法だと訴えられるケースが繰り返し発生しています。ドイツの出版社が広告ブロックのひとつである「AdBlock Plus」相手に起こした訴訟では、2018年の時点で「広告ブロッカーは合法」という判決が下されていましたが、ドイツの最高裁判所は過去の判決を覆して争点の再審理を命じています。

'Ad Blocking is Not Piracy' Decision Overturned By Top German Court * TorrentFreak
https://torrentfreak.com/ad-blocking-is-not-piracy-decision-overturned-by-top-german-court-250819/


Mozilla warns Germany could soon declare ad blockers illegal
https://www.bleepingcomputer.com/news/legal/mozilla-warns-germany-could-soon-declare-ad-blockers-illegal/

Adblock Plusはブラウザの拡張機能やスマートフォン向けアプリとして展開されている広告ブロッカーで、ドイツ・ケルンに本拠地を置く有限会社Eyeoにより開発されています。ドイツの出版社であるAxel Springerは、Adblock Plusによってビジネスモデルが妨害されているとして2015年に訴訟を起こしました。


当初、Axel Springerは「広告ブロッカーは競争法上の不正行為」として訴えを起こしました。しかし2018年に下された判決では、ドイツの連邦最高裁判所はAxel Springerの主張に同意せず、ソフトウェアを使用するかどうかは個々のユーザーに一任されているため、法律が破られて不公正な競争が行われているということはないとしています。

広告ブロック機能の雄「Adblock Plus」は違法と訴えるも最高裁の下した判決は「合法」 - GIGAZINE


引き続きAxel Springerは、「Adblock Plusは、ウェブサイトのコードを勝手に変更し、法的に保護されたコンテンツに直接アクセスすることを可能にしている」として、広告ブロッカーは「著作権違反である」という方向で再審理を要求しました。これに対しEyeoは「Adblock Plusは特定のコードを読み込まないだけで、コードの書き換えは行っていない」と反論した結果、2022年にハンブルク地方裁判所は「著作権法で定義されているコンピュータプログラムの無許可の複製または再加工の痕跡が見られない」として違法性を認めない判決が改めて下されました。

広告ブロックは著作権侵害ではないという判決が下る - GIGAZINE


Axel Springerは再度控訴しましたが、2023年に再び敗訴しています。しかし、Axel Springerがドイツの連邦最高裁判所(BGH)に控訴をした結果、連邦最高裁判所は「技術的・法的な詳細調査のために再審理を要する」として高等裁判所が下した判決を覆しました。

Axel Springerの新たな主張は、ドイツ著作権法第69a条第3項における「ソフトウェア保護規定」に基づいています。規定では、「著作者自身の知的創作の成果である限りにおいて、個別の著作物を構成する」場合に著作権による保護を受けるとされており、コンピュータプログラムは著作権法において著作物として扱われ、プログラムを複製、頒布、および公衆に利用可能にする独占的な権利を著作者は持っていることになります。

そのため、Axel Springerは自社のメディアを作成するために使用されているソフトウェアは著作物として保護される資格があるとした上で、「Adblock Plusがユーザーのブラウザにあるウェブサイトのコードをブロックまたは操作すると、独占的改変権と複製権の侵害に当たる」と主張しました。この主張を受け、連邦最高裁判所は「高等裁判所の判決は技術的に重要な基礎事項を確立することなく判決に至った」と指摘しました。


記事作成時点では、あくまで技術的な要素を含めた再審理が認められたというのみで、広告ブロッカーが違法と認められるかどうかは不明であり、著作権法のどの部分やウェブサイトのどの技術的な要素が訴訟を左右するのかも明らかではありません。

しかし、訴訟の結果としてウェブサイトのHTML/CSSが保護されたコンピュータプログラムであり、それらに介入すると違法な複製や変更に当たると見なされた場合、拡張機能などが大きな影響を受ける可能性が高くなります。Firefoxブラウザを運用するMozillaの上級製品顧問であるダニエル・ナザー氏は、「広告ブロック以外にも、ユーザーがブラウザやブラウザ拡張機能でウェブページを変更したい理由はたくさんあります。ドイツの法的紛争にある技術的背景は、さまざまなブラウザ拡張機能にも影響を及ぼし、ユーザーの選択を妨げる可能性があります」と警告しました。

新たな訴訟手続きは最終結論まで数年かかる見込みがあります。ナザー氏によると、拡張機能の開発者たちが将来の金銭的損失のリスクを避けるため、当面はツールの機能を制限する可能性があり、その結果ブラウザユーザーの自由な選択が阻害されるかもしれないとのことです。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
ネット上の記事から広告を消すAdblockは合法であると裁判官が判断した理由 - GIGAZINE

広告ブロック機能の雄「Adblock Plus」は違法と訴えるも最高裁の下した判決は「合法」 - GIGAZINE

広告ブロックは著作権侵害ではないという判決が下る - GIGAZINE

デジタル世界の「自由」は徐々に失われており「DRM義務化」「VPN非合法化」「アプリ更新への政府介入」といった最悪の状況に突き進む可能性がある - GIGAZINE

YouTubeの広告ブロッカー検出機能はEUの法律に違反しているという指摘 - GIGAZINE

in ソフトウェア,   ネットサービス, Posted by log1e_dh

You can read the machine translated English article German court overturns ruling that ad bl….