サイエンス

ADHDの症状がある若者はそうでない若者と音楽を聴く習慣が異なるという研究結果


不注意や衝動性を特徴とする発達障害である注意欠如多動症(ADHD)の症状がある若者は、「音楽を聴く習慣」がADHDの症状がない若者とは異なっているとの研究結果が報告されています。

Frontiers | Listening habits and subjective effects of background music in young adults with and without ADHD
https://www.frontiersin.org/journals/psychology/articles/10.3389/fpsyg.2024.1508181/full


Study reveals distinct music habits among young adults with ADHD symptoms
https://www.psypost.org/study-reveals-distinct-music-habits-among-young-adults-with-adhd-symptoms/

ADHDは多くの場合で成人期になるまで症状が持続し、特に不注意型の人では集中力が途切れがちだったり、タスク管理や整理整頓が苦手だったりすることがあります。ADHDの症状を緩和する方法としてはコンサータストラテラといった治療薬がありますが、一部の研究者らは薬以外にも、「BGMを流す」といった環境的な調整を含む代替戦略についても研究しています。

カナダのモントリオール大学で心理学科の博士課程に在籍しているケリー・アン・ラシャンス氏らは、若者が日常生活において音楽をどのように利用しているのか、そしてADHDの症状を持つ若者が定型発達者とどのように異なるのかを調査しました。

研究チームは、「ADHDの有無にかかわらず若者が日常生活、特に認知能力を必要とする活動において、どのようにBGMを使っているのかに興味がありました。なぜなら、過去の研究では実際のリスニング習慣を調査したものはほとんどなかったからです」と述べています。


研究チームは17~34歳の被験者434人を対象にオンライン調査を行い、音楽を聴く習慣や好み、そしてBGMが感情や認知機能に与える影響について質問しました。また、ADHD症状に関する標準化されたスクリーニングツールも提供し、その回答に応じて被験者を「ADHD症状のあるグループ」と「ADHD症状がみられなかったグループ」に分類したとのこと。

調査の結果、多くの若者が学習や問題の解決、読書といった必要な認知能力が高い作業中だけでなく、掃除や料理、運動といった認知能力があまり必要でないタスクの最中も、BGMとして音楽を聴いていることがわかりました。


しかし、ADHD症状があると分類されたグループはそうでないグループと比較して、学習や運動中にBGMを流す頻度が高いことも判明。また、全体的に見て認知的負荷が高くないタスクの最中にもBGMを流す頻度が高いことも確認されました。

研究チームは心理学系メディアのPsyPostに対し、「興味深いことに、グループ間に明確な違いが確認されました。ADHD症状があった被験者は、学習課題中に音楽を聴く頻度が高かっただけでなく、認知能力の要求度が高い活動と低い活動の両方において、刺激的な音楽を好んでいたのです。対照的に、神経学的に正常な被験者は、認知的に負荷の高い活動中にはリラックスできる音楽を好む傾向があり、それほど負荷の高くない作業中には刺激的な音楽を好む傾向がありました」と述べています。

なお、音楽が認知的なタスクに取り組んでいる最中の集中力や気分を改善するかどうかを尋ねたところ、ほとんどの被験者は音楽が集中力や気分の向上に役立ったと回答しました。しかし、予想に反してADHDの症状があるグループとないグループの間に有意な差はみられませんでした。


心理学理論のひとつである「Moderate Brain Arousal model(中度脳覚醒モデル)」では、ADHDの人々の脳は覚醒レベルがベースラインよりも低く、脳をタスクに取り組むのに必要な覚醒状態まで持っていくために、音楽などの外部刺激を利用する可能性があるとされています。今回の研究結果はこの説を支持するものであり、ADHDの症状を持つ人々が音楽を単に日常的なものとしてだけでなく、「刺激を求める欲求を満たすための戦略」として使っている可能性を示唆しています。

PsyPostは、「注意力に課題を抱える人々にとって、音楽は覚醒状態を調節したり、退屈を軽減したり、パフォーマンスを支援したりするのに役立つ、柔軟で自己主導型のツールとして機能する可能性があります。今後の研究ではこれらの結果を基に、実験室での実験を行ったり、異なる種類の音楽がADHDを持つ人の認知機能や感情にどう影響するかを調べたりすることが可能です」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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