人の性格は大学に進学してもほとんど変わらないという研究結果

大学に進学するなどして社会的な立場が変化すると、それに伴って性格まで変わるのではないかと思う人もいるかもしれません。ところが、大学に進学した若者とそうでない若者を対象にした研究では、大学進学は中核的な性格特性にほとんど影響しないことが示されました。
Social Class and Personality: The Effects of Educational Mobility on Personality Trait Change - Anatolia Batruch, Manon A. van Scheppingen, 2025
https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/19485506251326333

Personality stays mostly the same after moving up in social class, new study suggests
https://www.psypost.org/personality-stays-mostly-the-same-after-moving-up-in-social-class-new-study-suggests/
これまでの研究から、成人初期には人々の性格が「より誠実になり、感情的に安定し、協調性が高まる」という風に変化する傾向があると知られています。一説には、こうした変化の背後には就職や恋愛関係、大学進学などによって与えられた「人生の新たな役割」への適応があるといわれていますが、詳しいことはよくわかっていないとのこと。
そこで、スイス・ローザンヌ大学の心理学者であるAnatolia Batruch氏らの研究チームは、ドイツで実施された縦断研究であるGerman Socio-Economic Panel(ドイツ社会経済パネル)のデータを用いて、大学入学で新たな社会階層に入ることが性格に及ぼす影響を調査しました。
データには、青年期から30代になるまで追跡調査された4776人の集団が含まれていました。中でも研究チームは、「両親が大学に進学していない若年成人」に焦点を当て、「大学に進学したグループ」と「大学に進学しなかったグループ」で大学進学の影響を比較したとのこと。
今回の研究では、開放性・誠実性・外向性・協調性・神経症傾向(情緒安定性)からなる「ビッグファイブ性格特性」、自分自身が人生の結果に対して影響力を持っていると信じる度合いである「統制の所在」、「リスクを冒す傾向」について分析が行われました。これらの特性は健康や仕事での成功、幸福感といった人生の結果と関連付けられています。

分析の結果、大学に進学したグループと進学しなかったグループの両方で、時間経過と共にほぼ同様の性格特性が発達したことがわかりました。特に誠実性の向上が両グループで顕著にみられ、これは成人期になると責任感や組織力が高まる傾向にあることを示す他の研究結果と一致するものです。一方、外向性や開放性、神経症傾向といった特性については、両グループで有意な変化はみられませんでした。
Batruch氏は、「私たちは、全体として性格がほとんど変化しなかったことに驚かされました。社会階層と性格の間に関連性があることを考慮すると、社会階層が変わると何が起こると言えるのでしょうか?おそらく、変化はより長い期間を経て、あるいは私たちが予想していたよりも微妙なメカニズムを通じて起こるのかもしれません」と述べています。
大学に進学したかどうかで顕著な違いが見られたのは、「リスクを冒す傾向」でした。大学に進学したグループはそうでないグループと比較して、時間経過と共にリスクを取る意欲がわずかながらも着実に低下し、大学進学から約10年後には統計的に有意な差となりました。この傾向は、両親とも大学に通っていた人々でも同様で、大学出身者はいずれも年齢を重ねるごとにリスク回避的になったとのことです。
これらの研究結果は、大学進学が広範な性格特性よりも、リスクを冒す傾向といった特定の分野に影響を及ぼすことを示唆しています。考えられる説明のひとつには、大学という環境そのものが計画性や慎重さ、長期的な思考を重視する傾向にあるため、これらの影響でリスクを冒す意欲を減少させる可能性があるという説があります。
さらに研究チームは、大学進学前の17歳時点でリスク回避傾向が強かった若者は、そもそも大学に進学する可能性が高いことも発見しました。しかし、こうした既存の差異を考慮に入れてもなお、大学進学者がリスク回避的になる傾向は維持されました。

Batruch氏は、「家族で初めて大学に入学すると不安になるかもしれませんが、それによって人格の核となる特性が変化するわけではないようです。言い換えれば、教育の流動性はその人の本質を変えることなく、機会や視点を再構築してくれる可能性があるのです」と述べました。
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