AGIを実現するために必須の能力は何なのか?そもそも知能とは何か?

AIの技術は急速に進歩していますが、何でもできる汎用人工知能(AGI)はまだ登場していません。Googleの元研究員でAIの研究を先導してきたフランソワ・ショレ氏は、2025年6月に開催された「AI Startup School」でAGIの要件や既存のAIに足りない点などを解説しています。
François Chollet: How We Get To AGI - YouTube

ショレ氏はGoogleの研究員として深層学習用ライブラリ「Keras」を開発した人物で、2024年11月までGoogleに在籍していました。記事作成時点では自ら創業したAI研究企業「Ndea」で研究を進めているほか、「ARC-AGI」と呼ばれるAIベンチマークを開発してAGIの開発を推進しています。
人間に匹敵する知能を持った汎用人工知能を開発した研究者に総額100万ドルの賞金を授与するコンテスト「ARC Prize」が開催 - GIGAZINE

多くのAIベンチマークは「AIがどのような知識を持っているか」という点に着目しています。以下のグラフは横軸が「各ベンチマークが登場してからの年数」、縦軸が「AIが記録したスコア」を示しています。多くのベンチマークは登場直後は「解くのが難しいテスト」としてAIの前に立ちはだかりますが、AIの性能向上に伴ってスコアが上がり、数年でAIが「人間のスコア」を超えてしまいます。しかし、AIがこれらのベンチマークで人間のスコアを超えたからといって、AIが人間と同等レベルの知能を手に入れたと言えるわけではありません。

ショレ氏は知能を「初めて遭遇する問題や新しい状況に対応する能力」と定義し、この能力を「流動的知能」と呼んでいます。ショレ氏が2019年にリリースしたベンチマークテスト「ARC-AGI-1」は、AIの「既存の知識を組み合わせて問題を解く能力」を測定できるように設計されており、OpenAIのGPTシリーズの場合、2025年に登場したGPT 4.5であっても低いスコアしか記録できません。

推論モデルのoシリーズが登場して以降、ARC-AGI-1のスコアが急速に伸びて80%以上のスコアを記録できるようになりました。しかし、ARC-AGI-1はあくまで「流動的知能が『ある」か『ない』か」を測定するものであり、能力の度合を測定できるものではないとのこと。このため、ARC-AGI-1で満点を記録したとしてもAGIを実現したとは言えません。

以下の図はAIの「既存の知識をもとに新たな状況に対応する能力」を簡単に示したものです。低知能システムは知識同士を関連付ける能力が低いですが、高知能システムは関連付け能力が向上して対応可能な状況が増えます。

2025年3月に登場した「ARC-AGI-2」は流動的知能の高低を測定できるように設計されています。

さらに、難度の高い問題で構成された「ARC-AGI-3」の開発プレビュー版が日本時間の2025年7月19日にリリースされました。ただし、ショレ氏によるとARC-AGI-3の問題を完璧に解けたとしてもAGIを実現したとは言えないとのこと。ショレ氏は「ARC-AGI-4」などの将来のバージョンを経てAGIに近づいていくと述べています。
Today, we're announcing a preview of ARC-AGI-3, the Interactive Reasoning Benchmark with the widest gap between easy for humans and hard for AI
— ARC Prize (@arcprize) July 18, 2025
We’re releasing:
* 3 games (environments)
* $10K agent contest
* AI agents API
Starting scores - Frontier AI: 0%, Humans: 100% pic.twitter.com/3YY6jV2RdY
また、ショレ氏は自身が設立したAI企業「Ndea」でAIの開発も進めています。Ndeaでは既存の知識を元に新たな問題解決プログラムを作り出す「プログラム合成」に焦点を当てて研究が進められており、記事作成時点では「ARC-AGIについて何も知らない状態でARC-AGIの問題を解けるAI」の実現を目指しているそうです。
Ndea
https://ndea.com/

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