サイエンス

「精液アレルギー」は想像よりも一般的なものだと専門家が解説、男性が発症する可能性も


一部の人々は精液に反応してかゆみやヒリヒリする痛み、腫れ、時には呼吸困難などの症状を呈する「精液アレルギー」を持っています。イギリスのマンチェスター・メトロポリタン大学で生殖科学の准教授を務めるマイケル・キャロル氏が、精液アレルギーはどういう病気なのかについて解説しました。

Semen allergies may be surprisingly common – here’s what you need to know
https://theconversation.com/semen-allergies-may-be-surprisingly-common-heres-what-you-need-to-know-259308


精液アレルギーは1967年に初めて文書化された病気で、記事作成時点では花粉症やピーナッツアレルギーなどと同じカテゴリーのI型アレルギーに分類されています。アレルギー反応を引き起こすのは精子細胞ではなく、前立腺液精のうの分泌液からなる精漿(せいしょう)という液体部分です。

症状は軽度から重度までさまざまなものがあり、外陰部や膣(ちつ)の灼熱感、かゆみ、赤み、腫れといった局所的な反応を経験するケースもあれば、じんましんや呼気性喘鳴、めまい、鼻水、アナフィラキシーショックといった全身症状を呈するケースもあります。

長らく精液アレルギーは非常にまれな疾患だと思われており、1997年までは世界中に100人未満の患者しかないと考えられていました。しかし、アレルギー専門医のジョナサン・バーンスタイン氏が主導した1997年の研究では、セックスの後に精液アレルギーと一致する症状を報告した女性のうち、約12%に精液アレルギーの疑いがあることが判明しました。

精液アレルギーは多くの症例が報告されておらず、性感染症などと誤診される可能性も高いとのこと。2024年の研究でもこの結果が裏付けられており、精液アレルギーは世間で思われている以上に一般的な病気である可能性が示されています。なお、精液アレルギーとその他の過敏症などを区別する特徴の1つは、「コンドームを使用すると症状が出ない」という点だとのこと。


キャロル氏によると、精液アレルギーには花粉症や食物アレルギーなどと同様に、別の物質に対してもアレルギー反応を起こす交差反応性があるとのこと。それは犬のフケに含まれる「Can f 5」というタンパク質であり、犬アレルギーを持っている女性は、精液にもアレルギー反応を起こす可能性があるとキャロル氏は指摘しています。

精液アレルギーの診断は詳細な性行歴や病歴のチェックから始まり、多くの場合はパートナーの精液を用いた皮膚プリックテスト、精漿特異抗体の血液検査などを用いて行われます。

また精液アレルギーを持っているのは女性だけではなく、男性の中にも自分の精液に対してアレルギー反応を起こす人がいるとのこと。一部の男性は、射精の後に倦怠(けんたい)感や筋肉痛、集中力や記憶力の低下といった症状を呈するオーガズム後疾患を持っており、その原因が精液アレルギーである可能性が指摘されているそうです。


なお、精液アレルギーを持っているからといって不妊症になるわけではありませんが、セックスによって症状が出る以上、妊娠が困難になる可能性はあります。治療法としては予防的な抗ヒスタミン薬を服用してアレルギー反応を和らげたり、抗炎症薬を服用したり、希釈した精漿を用いた脱感作療法などが挙げられます。また、重症の場合は洗浄した精子細胞を用いた体外受精を選択し、受精することも可能です。

キャロル氏は、「性に関する症状は口にされないまま放置されがちです。恥ずかしさや偏見、医師の認識不足などが原因で、多くの女性が黙って苦しみ続けています。バーンスタイン氏の1997年の研究では、性行為後に症状を訴えた女性のほぼ半数が精液アレルギーの検査を受けたことがなく、多くは数年にわたって誤診され、適切な治療が受けていなかったことが明らかになりました。セックスの後に頻繁にかゆみや痛み、不快感を感じており、コンドームが症状を防ぐのに効果的であるならば、精液アレルギーの可能性があります」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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