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AIによってバーチャルアバターや顔出ししないナレーションの作成が容易になってVTuberやTikTokクリエイターの新たな波が押し寄せている


バーチャルYouTuber(Vtuber)は2017年ごろから日本で流行したコンテンツで、もともとはアーティストが作成したイラストやLive2D、3Dモデルなどのキャラクターをアバターやアイコンとして用いて、動画投稿や配信を行う形態として広がりました。生成AIの発展により、キャラクターを生み出せるだけではなく声や動画、キャラクターが話す文章もAIが生成できるようになったため、VTuberの制作がかつてないほど容易になり、「新しいバーチャルクリエイターの波が巻き起こっている」とアメリカの大手放送局であるCNBCが報じています。

AI virtual personality YouTubers, or 'VTubers,' are earning millions
https://www.cnbc.com/2025/07/02/ai-virtual-personality-youtubers-or-vtubers-are-earning-millions.html


主にグランド・セフト・オートシリーズやマインクラフトなどのゲームプレイ動画で250万人の登録者数と7億回以上の再生回数を集めている人気のYouTuber「Bloo」は、3Dアバターの見た目をしたバーチャルキャラクターです。Blooは1500万人の登録者を抱えるYouTubeチャンネル「kwebbelkop」を所有するジョルディ・ファン・デン・ブッシェ氏のもう一つのアカウントであり、 ChatGPTやGemini、Claude、音声クローンAIのElevenLabsなど、AIを駆使したVtuberです。

以下の画像左がBloo、右がブッシェ氏です。Blooは多くのVTuberと同様に、モーションキャプチャーやフェイストラッキング技術を用いて、人間がキャラクターの声や動きを操り人形のようにリアルタイムで操作しています。


Blooを制作した理由について、ブッシェ氏は「コンテンツ制作の需要に追いつけなくなったため」と語っています。「人間が作業してコンテンツを制作し続けていると、どうしても作業量と成果が釣り合わなくなる部分が生まれます。唯一論理的な方法は、人間をフォトリアリスティックな人物かコミックのキャラクターに置き換えることでした。VTuberが唯一の選択肢でした。そして、そこからBlooが生まれたのです」とブッシェ氏は明かしました。

ブッシェ氏は長期的な目標として、Blooのパーソナリティやコンテンツ制作プロセス全体をAIで実行する計画を掲げています。実際に、ブッシェ氏は既にBlooのチャンネルでAIが作成した動画をテストしていますが、AIがまだ人間の直感や想像力には大きく劣るため、コンテンツのパフォーマンスがそれほど良くないとブッシェ氏は指摘。その上で、「AIが人間よりも優れ、速く、あるいは安く作業できるようになれば、私たちはそれを恒久的に使い始めるでしょう」とブッシェ氏は語っています。

ブッシェ氏が理想とするようなバーチャルアカウントの技術は、AI技術の発展に合わせて急速に成長しています。スタートアップのHedraは、最長5分間の動画を生成する「Character-3」というAIを提供しており、ユーザーが動画用のキャラクターを作成し、セリフやその他の特徴を追加できる機能を実装しています。Hedraのマイケル・リンゲルバッハCEOはCNBCの取材に対し、「ユーザーが自立した完全自動化キャラクターを作成できる製品を開発中です。私たちはCharacter-3のようなモデルをリアルタイムに加速させるための研究をたくさん進めていますが、それはVTuberにぴったりなものになるでしょう」と述べました。


Googleが2025年5月に発表した動画生成AI「Veo 3」も、完全にバーチャルなキャラクターを作成できる可能性があります。Veo 3は過去モデルの品質を向上させたことに加えて、Googleの動画生成AIとして初めて「音声付き」の動画生成が実現しており、Googleは「ビデオ生成の無音時代に別れを告げましょう」と述べて性能をアピールしました。一方で、GoogleはYouTubeにアップロードされたコンテンツの一部を使ってVeo 3のトレーニングをしており、多くのクリエイターはトレーニングに使われることを知らなかったと報じられるなど、著作権上の危機も懸念されています。

Googleが動画生成AI「Veo 3」を発表、4K出力可能で音声も同時に生成できる - GIGAZINE


中国では実際に、アニメーションと音響技術と機械学習を組み合わせ、歌ったり配信で交流したりもできる「デジタルヒューマン」が2023年頃から急速に普及しており、バーチャルアイドルやスキャンダルのない仮想インフルエンサーとしての活躍が期待されています。また、月に160万円超を稼ぐAIモデル「Aitana(アイタナ)」など、AIで作られた架空の人物がインフルエンサーとして活躍する実例もあります。

Vtuberとは違って中の人が本当にいない「デジタルヒューマン」産業がスキャンダルのないインフルエンサーを目指して中国で急成長中 - GIGAZINE


AIによる自立した完全自動化Vtuberに懸念されるその他の問題として、コンテンツの信頼性があります。企業のAI市場への進出を支援するLatent Space Advisoryの創業者であるヘンリー・アジダー氏は、「たとえコンテンツが有益で、誰かがそれを面白い、あるいは役に立つと感じたとしても、何が人間が作ったもので何がそうでないかを理解する方法がない時代に入りつつあると感じています」と指摘しました。AIによって作成された説得力のある動画は、誤情報が拡散される危険性を抱えています。

また、投稿サイトやSNSのフィードにあふれる大量の低品質なAIコンテンツは「AIスロップ」と呼ばれ、嫌悪感を抱くユーザーもいます。MetaでAI政策アドバイザーを務めるアジダー氏は、「スロップの時代は避けられません。FacebookとInstagramでAIスロップに直面しているMetaは、どう対応すべきかまだ分かっていません」と述べています。

一方で、CNBCが取材したAIコンテンツクリエイターの多くは、結局のところ需要と共有の問題が重要だと主張しています。HedraのリンゲルバッハCEOは「雑なコンテンツはインターネット上に常に存在してきました。面白くないコンテンツを作ることに対する障壁はこれまでもありません。今は、作成がはるかに容易になったことで、面白くないコンテンツが作られやすくなったのと同時に、本当に面白いコンテンツを作る機会も増えているのです」とAIコンテンツ制作についての意見を語りました。

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in ソフトウェア, Posted by log1e_dh

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