風力&太陽光で駆動し海上で数カ月自律航行も可能な軍用海上ドローンの試験運行をデンマークがスタート

デンマーク軍が風力発電や太陽光発電で電力を供給可能で、数カ月自律航行もできる無人水上艇の試験運用を開始したと発表しました。
The Future of Maritime Surveillance Launches in the Baltic Sea – Saildrone
https://www.saildrone.com/news/saildrone-launches-the-future-of-maritime-surveillance-in-the-baltic-sea

Saildrone sat i søen – Forsvaret tester ny kurs for maritim overvågning
https://www.fmi.dk/da/nyheder/2025/saildrone-sat-i-soen--forsvaret-tester-ny-kurs-for-maritim-overvagning/
Denmark launches robotic sailboats for surveillance in Baltic and North Seas | AP News
https://apnews.com/article/denmark-robot-sailboats-baltic-sea-bfa31c98cf7c93320115c0ad0e6908c5
現地時間の2025年6月16日、デンマーク国防省調達・兵站機構(DALO)の協力のもと、Saildrone製無人水上艇(USV)「ボイジャー」4隻が、3カ月の試験任務に投入されました。ボイジャーは2022年のロシアによるウクライナ侵攻以来、海上緊張と破壊工作の疑いが急激に高まっているバルト海、北海、デンマーク領海、NATO領海を巡回予定です。
Today marks a major milestone in the evolution of maritime autonomy in Europe: Four Saildrone Voyager USVs have been deployed for a three-month mission in the Baltic Sea! 🇩🇰🇪🇺 https://t.co/e3q33AcITu pic.twitter.com/FiVZWKUvqL
— Saildrone (@saildrone) June 16, 2025
このミッションはデンマーク軍による初のボイジャーの試験運用であり、SaildroneとDALOの緊密な協力関係および連携を反映したものとなっています。Saildroneは2025年春、デンマーク輸出投資基金(EIFO)から戦略的投資を受け、デンマークに拠点を置く新しい子会社を設立することを発表しました。
デンマーク軍が試験運用を開始したボイジャーが、バルト海を航行する様子を撮影した動画が以下。なお、以下の動画は今回の試験運用開始前である2025年6月6日に撮影されたもので、動画に映っている2隻のボイジャーはNATOの哨戒隊に参加しています。
デンマーク軍が試験運用開始したSaildrone製の無人水上艇「ボヤージュ」 - YouTube

バルト海は地政学的複雑さが増す重要な海域です。パイプラインやデータケーブルといった重要な海底インフラが集中しており、複数のNATO加盟国とパートナー国が国境を接しています。海軍の活動が活発化する中、北海とバルト海の海上交差点に位置するデンマークは、海上安全保障および状況認識の向上を主導する上で、非常に複雑な立場にあります。
デンマーク軍によるボイジャーの配備は、地域の課題に対する明確なリーダーシップを示すものです。自律型情報監視偵察(ISR)システムの導入により、デンマークはUSVの航行の自由確保、重要な海上インフラの保全、そして同盟国の即応態勢への貢献能力を強化可能となります。
Saildroneの創設者兼CEOであるリチャード・ジェンキンス氏は、「バルト海、北海、そしてヨーロッパ北極海は現在、前例のない脅威に直面しています。デンマーク軍と提携し、Saildroneのシステムを配備することで、ヨーロッパの重要な海底インフラの保護と地域の安全保障の向上に貢献できることを大変嬉しく思います」と語っています。
以下は左からDALOの国家兵器局長を務めるキム・イェスパー・ヨルゲンセン中将、EIFOの取締役兼パートナーであるジェイコブ・アラップ・ブラッティング・ペダーセン氏、SaildroneのジェンキンスCEOです。

ヨルゲンセン中将、ペダーセン氏、ジェンキンスCEOの3人が出席したボイジャーの試験運用について発表した記者会見の様子は、以下の動画でチェックできます。
デンマーク軍が試験運用するSaildrone製無人水上艇「ボヤージュ」の発表記者会見 - YouTube

ボイジャーは風力および太陽光エネルギーで稼働可能というだけでなく、ディーゼル発電や電気推進機構も有しています。これにより、従来の有人哨戒機と比べて二酸化炭素排出量を大幅に削減しながら、広域にわたって継続的な監視を実現します。
ボイジャーはレーダー、自動船舶識別装置(AIS)、コンピュータービジョンを備えたカメラシステムなど、最先端の海洋センサーを搭載しています。安全な衛星通信機能および完全な自律性を備えており、海上で数カ月稼働しながら実用的な情報を継続的に収集・送信することが可能です。
ジェンキンスCEOによると、ボイジャーは機械学習と人工知能(AI)を使い、外洋の水深約20~30マイル(約30~50km)までの「水面上および水面下の全体像」を撮影できる模様。ボイジャーは海底ケーブルの損傷、違法漁業、人・武器・麻薬の密輸といった海洋の脅威を監視することが可能です。Saildroneはボイジャーについて、「これまで目や耳が届かなかった場所に行くことになる」と説明しています。
EIFOのペダー・ルンドクイストCEOは、「Saildroneへの投資、そしてデンマークがSaildroneの欧州活動の中心地に選ばれたことを大変嬉しく思います。Saildroneは急成長市場をリードする企業であり、この技術へのアクセスはデンマークと欧州の安全保障にとって極めて重要となる可能性があります。Saildroneは巡視船の数分の1のコストで、デンマークの防衛産業および北極圏の監視やデンマーク領海における妨害行為への対抗といったデンマークの課題の両方に影響を与えることが可能であると期待しています」と語りました。
デンマーク王立防衛大学のピーター・ヴィゴ・ヤコブセン氏は、「軍艦であれ、民間の貨物船であれ、ロシアの船舶を全て追跡するのは、単純に費用がかかりすぎます」「我々は、潜在的な脅威を常に監視できる階層型システムを、以前よりもはるかに安価なレベルで構築しようとしています」と述べ、ボイジャーの重要性を説いています。
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in ハードウェア, 動画, Posted by logu_ii
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