ハードウェア

世界初のシリコン製ではない2次元材料のコンピューターが開発される


半導体を始めとして多くのPC部品には「シリコン」という素材が使われています。ペンシルベニア州立大学の研究者らは、シリコンとは異なり原子1個分の厚さしかなく、そのスケールでも特性を維持する材料を用いて単純な演算が可能なコンピューターを開発したと発表しました。

A complementary two-dimensional material-based one instruction set computer | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-025-08963-7


World’s first 2D, non-silicon computer developed | Penn State University
https://www.psu.edu/news/research/story/worlds-first-2d-non-silicon-computer-developed

ペンシルベニア州立大学の研究者らは、現代のほぼすべての電子機器の中核をなす技術である相補型金属酸化膜半導体(CMOS)コンピューターをシリコンなしで開発しました。研究者らはCMOSコンピューターで電流の流れを制御するのに必要な「n型」と「p型」の2種類のトランジスタを開発するため、n型トランジスタには二硫化モリブデンを、p型トランジスタには二セレン化タングステンを使用したとのこと。

半導体のトランジスタには通常「電界効果トランジスタ」と呼ばれるトランジスタが使われ、この小型化にシリコンが一役買っていました。しかし、シリコン製デバイスが小さくなるにつれてその性能が低下し始めることが課題だったといいます。


低消費電力で高いパフォーマンスを実現するためには、n型とp型の両方が一緒に動作する必要がありましたが、シリコン以外の材料でこうした動作を実現するのは困難でした。先行研究では2次元材料を使った小型回路が実証されてきましたが、複雑で機能的なコンピューターにスケーリングするのは依然として困難だったそうです。

研究チームが開発したコンピューターは、大面積の二硫化モリブデンと二セレン化タングステンを組み合わせた2次元材料だけで作られており、原子レベルの厚さでも卓越した電子特性を維持するとのことです。

研究チームは有機金属化学気相成長法(MOCVD法)を用いて二硫化モリブデンと二セレン化タングステンの大きなシートを成長させ、各タイプのトランジスタを1000個以上作製しました。研究チームは「デバイスの製造工程と後処理工程を注意深く調整することで、n型とp型両方のトランジスタのしきい値電圧を調整することができ、完全に機能するCMOS論理回路の構築が可能になった」と記しています。


研究チームによると、2次元材料製トランジスタの動作周波数は従来のシリコンCMOS回路に比べて低いものの、単純な論理演算は実行可能だとのこと。研究チームは「さらなる最適化の余地は残されていますが、この研究は2次元材料を使用するというエレクトロニクス分野の研究を後押しする重要なマイルストーンとなります」と述べました。

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in ハードウェア, Posted by log1p_kr

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