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SpaceXがトランプ大統領からの脅迫を受けて宇宙船「ドラゴン」を退役させると発表


大統領選挙から政府効率化省(DOGE)での活動に至るまでドナルド・トランプ大統領と蜜月の関係を続けていたイーロン・マスク氏が、トランプ大統領への反発を強めました。マスク氏いわく、トランプ大統領がマスク氏との政府契約を解除すると脅したため、マスク氏の事業「SpaceX」の宇宙船をすぐさま退役させるとのことです。

Elon Musk: SpaceX to decommission Dragon over Trump threat
https://www.cnbc.com/2025/06/05/musk-trump-spacex-dragon-nasa.html

How NASA Would Struggle Without SpaceX if Trump Cancels Musk’s Contracts - The New York Times
https://www.nytimes.com/2025/06/05/science/spacex-nasa-trump-elon-musk.html

Musk-Trump breakup puts billions in SpaceX contracts at risk, jolting US space program | Reuters
https://www.reuters.com/business/aerospace-defense/spacex-will-decommission-dragon-spacecraft-musk-says-feud-with-trump-escalates-2025-06-05/

2025年6月6日、トランプ大統領は自身が保有するSNSのTruth Socialで「数十億ドル規模の予算を節約する最も簡単な方法は、イーロン・マスクの政府補助金と契約を打ち切ることだ。バイデン氏がこれをやらなかったことに常に驚いていた」と投稿。これを受けてマスク氏は「私の政府契約のキャンセルに関する大統領の声明を考慮して、SpaceXのドラゴン宇宙船の廃止を直ちに開始する」と発表しました。


マスク氏はトランプ氏を支持して密接な協力関係を築いていましたが、一方で関税政策などを批判することもあり、意見が完全に一致しているわけではありませんでした。この両者の関係は、トランプ大統領が立案して下院を通過した大型減税法案について、マスク氏が「吐き気がするほど忌まわしい」と公然と批判したことから悪化しました。この法案は税収と歳出の削減を目指すもので、超党派の予算局は2034年までの10年で歳入を3兆6700億ドル(約527兆円)、歳出を1兆2500億ドル(約180兆円)削減するだろうと見積もり、結果的に財政赤字が2兆4200億ドル(約348兆円)増加させるだろうと指摘しています。

この法案で2034年までに1090万人以上のアメリカ人が健康保険に加入できなくなると予測されているほか、2024年に推定4100万人が利用したとされる補足栄養支援プログラムへの資金が2670億ドル(約38兆円)削減されると見積もられています

一方で予算局の見積もりにはトランプ大統領の新たな高関税政策による税収や歳出削減・減税による経済成長の押し上げ効果が考慮されていないため、トランプ陣営は予算局の予測は不正確だと非難しました。

この法案に基づき、トランプ大統領はマスク氏の政府契約を打ち切ると豪語したわけですが、マスク氏の宇宙船が退役するとアメリカ航空宇宙局(NASA)が利用できる宇宙船が実質的にゼロになるのではとの懸念が浮上しています。


SpaceXは2006年に貨物と物資を輸送する契約をNASAと結んで以来、NASA、空軍、その他の政府機関から200億ドル(約2兆8700億円)以上の契約を獲得してNASAに協力し続けています。2020年には初めて宇宙飛行士を宇宙ステーションに輸送する契約を獲得し、「ドラゴン」宇宙船で宇宙飛行士を輸送しました。

ニューヨーク・タイムズによると、仮にドラゴンが退役した場合、NASAには国際宇宙ステーションに行くための代替手段がほとんどないため、宇宙開発計画が著しく遅れる可能性があるとのことです。例えばNASAが契約しているボーイングは主力宇宙船スターライナーの修理の真っ最中で、2026年になるまで打ち上げられない見込みです。航空宇宙企業のノースロップ・グラマンも、同社の「シグナス」宇宙船で国際宇宙ステーションに貨物を運ぶ契約を結んでいますが、打ち上げ前の輸送中に損傷し、廃棄を余儀なくされています。このような状況のため、NASAはロシアのソユーズ宇宙船を間借りしなければならない可能性すらあります。また、ドラゴンの運用停止は国際協定に基づく国際宇宙ステーション廃止計画にも影響を及ぼす可能性が高いとも指摘されています。


トランプ大統領の法案について、マスク氏は財政赤字が増加することを見越して「醜い法案」と非難していますが、一方のトランプ大統領は「(前から計画していたので)私から背を向けるなら何カ月も前にそうすべきだった」と反論しています。トランプ大統領の元顧問、スティーブ・バノン氏は、トランプ大統領に対して「SpaceXの経営権を掌握するための大統領令に署名すべきで、マスク氏は国外追放すべきだ」と声高に主張しました。

・2025年6月6日13時30分追記:マスク氏が前言撤回しました。

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in Posted by log1p_kr

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