2025年に新しく認定された「5型糖尿病」とは?

国際糖尿病連合は2025年4月8日の世界糖尿病会議で、栄養不足に関連する糖尿病を「5型糖尿病」として正式に認定しました。新しい区分として認定された5型糖尿病の特徴や、よく知られている1型と2型の糖尿病との違いを、イギリスにあるエクセター大学臨床・生物医学科学部の上級講師であるクレイグ・ビール氏がわかりやすく解説しました。
Type 5 diabetes is a newly recognised disease – here are all the types of diabetes you need to know about
https://theconversation.com/type-5-diabetes-is-a-newly-recognised-disease-here-are-all-the-types-of-diabetes-you-need-to-know-about-256262

ビール氏によると、糖尿病は細かくわけると12種類以上あり、それらの分類は番号から想像されるほど整然としたものではないとのこと。そこで、ビール氏は多くの人にとって聞き慣れないものを含む4つの分類と、新しく設定された5番目の種類の糖尿病を、以下の5つにまとめました。
◆1型糖尿病
1型糖尿病は、体の免疫システムがすい臓のインスリン産生細胞を誤って攻撃することで発症するもので、この自己免疫反応は乳児から高齢者まであらゆる年齢で発生する可能性があります。
このタイプの糖尿病は、遺伝的な素因とウイルス感染などの環境的な要因の組み合わせによって生じると考えられており、食生活やライフスタイルとは関係がありません。
治療には、注射またはポンプによるインスリン療法が生涯にわたって行われます。

また、低血糖症に悩む一部の人の中には、亡くなったドナーからすい臓のインスリン産生細胞の移植を受ける人もいます。多くの場合、この移植によってインスリン注射の回数を減らすことが可能で、中にはインスリンの服用が完全に必要なくなるケースもあるとのこと。
さらに、強力な免疫抑制剤が必要になるものの、すい臓のランゲルハンス島にあるベータ細胞を幹細胞から作成し、これを移植する「ベータ細胞療法」を受けた人もいます。この治療法は、糖尿病をより効果的に治療することを目指して行われるものですが、記事作成時点では少数の試験的な試みにとどまっており、まだ広く普及するには至っていません。
◆2型糖尿病
2型糖尿病は、最も一般的な糖尿病で、ボディマス指数(BMI)の高さと関連付けられることがよくあります。しかし、標準体重の場合でも、強い遺伝的素因により2型糖尿病を発症する人もいて、特に南アジアの人やアフリカ系、カリブ海諸国の人などの特定のグループは、やせていてもリスクが高いとされています。
2型糖尿病の治療には、血糖値をコントロールする薬が数十種類使われていて、その中にはインスリンの産生を促すものもあれば、第一選択薬として推奨されているメトホルミンのようにインスリン感受性を改善したり、肝臓でのブドウ糖産生を抑制したりする効果を持つ薬もあります。

また、生活習慣の見直しも2型糖尿病の改善につながります。例えば、医学雑誌のThe Lancetに掲載された2018年の研究では、1日の摂取カロリーを約800kcalに抑える低カロリー食を12カ月間継続したところ、被験者の46%が寛解、つまり糖尿病が治ったのと同様の状態を維持するのに成功したことが報告されました。
◆妊娠糖尿病
このタイプの糖尿病は、文字通り妊娠中、一般的には妊娠24週から28週の間に発症するもので、ホルモンの変化によってインスリンに対する感受性が低下することによって引き起こされます。
危険因子として、太りすぎまたは肥満、糖尿病の家族歴、以前の妊娠で大きな赤ちゃんを出産したことなどが挙げられるほか、インスリン感受性は加齢に伴って低下するため、年齢も要因となります。治療には食事療法や運動療法、経口薬や注射薬のインスリン製剤が用いられます。

◆まれな糖尿病
前述の12種類以上の分類とは別に、糖尿病には少なくとも9つのサブタイプがあるとされており、その中にはまれな遺伝子変異による疾患や、ステロイドなどの薬剤や手術などの治療によって引き起こされるものもあります。
主なものとしては、遺伝子変異の一部がすい臓のインスリン分泌に影響を与える「新生児糖尿病」、すい臓の発達やすい臓の細胞が糖を感知する方法に影響を与える遺伝子変異などに関連する「若年発症成人型糖尿病(MODY)」、すい臓がんやその治療のための手術、すい炎などのすい臓のダメージが引き金となる「3c型糖尿病」、遺伝性疾患の嚢胞(のうほう)性線維症によって引き起こされる「嚢胞性線維症関連糖尿病」などがあります。

◆5型糖尿病
新たに認定されたこの5型糖尿病は、幼少期の栄養失調に関連したもので、低所得国に多く見られ、世界に2000万人から2500万人の患者がいると推定されています。
5型糖尿病の人の中には、体重が減少したり、インスリンが不足したりする人がいますが、1型糖尿病とは異なり、免疫系が原因でインスリンが不足するわけではありません。原因は、幼少期にすい臓が正常に発達するのに必要な栄養素が摂取できなかったことだと考えられています。

ビール氏によると、以前からラットを用いた研究で、妊娠中または青年期の低タンパク質食がすい臓の発達不良につながることが知られていたとのこと。すい臓が小さいということは、インスリンを産生する細胞の予備が少ないということなので、すい臓の発達不良はさまざまな糖尿病の危険因子となります。
ビール氏は「医学の発展とともに、糖尿病の分類も進化しています。栄養失調に関連した糖尿病を5型として認定することは、議論を活性化させるでしょう。これは、特に低所得国における、よりよい世界的理解とケアへの一歩となります」と述べました。
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in サイエンス, Posted by log1l_ks
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