動画

なぜ会社ではわかりにくい「ビジネス用語」が使われるのか?


ビジネスシーンでは、正確にやりとりしたいはずなのに耳なじみがなくてわかりにくい「ビジネス用語」が飛び交うことがあります。なぜ積極的にビジネス用語を使う人がいるのか、社会言語学者のエリカ・ブロゾフスキー氏が解説しています。

Where Did Cringey Corporate Jargon Come From? | Otherwords - YouTube


日本語では会議の議題やスケジュールを指す「アジェンダ」、意見が合意することやそのための準備を指す「コンセンサス」など、ビジネスシーンでしかあまり聞かないようなビジネス用語が数多くあります。英語でも同様に、「drill down(データを掘り下げる)」「standup(短時間の会議)」など、ビジネスシーンで特別な意味がある用語がたくさん存在しています。


ブロゾフスキー氏は、このようなビジネス用語について「誰も好まないのに、誰もが使っているという、言語の中でも奇妙な位置を占めています」と指摘。ブロゾフスキー氏によると、ビジネス用語は言語学の用語で「Jargon(業界用語)」と呼ばれる、特定の職業や活動に従事する人に特有の技術用語に分類されるとのこと。業界用語は、部外者には意味が通じなくても、それを使用するメンバーにとってはコミュニケーションをより正確かつ効率的にするためのものです。


ビジネス用語の多くは、第二次世界大戦の終わりに、退役軍人が社会人として仕事に就いていくとき、多くの軍事専門用語が持ち込まれて誕生しました。「boots on the ground(地面の上のブーツ)」は「軍事などの現場で実際に活動している人」を指す表現ですが、ビジネス用語としても「現地に人員を置く」という意味で用いられます。組織や事業の遂行に不可欠な要素を指す「mission critical」という言葉も、軍事作戦が起源となっています。


近い時期にビジネスシーンに導入されたのがスポーツの用語です。船の操舵(そうだ)室を指す「wheelhouse」は、ビジネスシーンでは「自分の得意な分野」「最も能力を発揮できる場所」という意味で用いられますが、1959年当時は野球選手がホームランを打つ可能性が最も高いゾーンのことを指していました。そのほか、「across the board(全体的に見て)」という表現は、観客が競馬に賭けるための表に由来しているそうです。20世紀半ば頃にビジネスシーンでスポーツ関連のスラングが多く導入された理由として、ブロゾフスキー氏は「労働者がビジネスを競争として捉えていたこと、あるいはその時代にオフィス仕事に就く人たちがスポーツ観戦を趣味としている人が多かったことを物語っているかもしれません」と推測しています。


業界用語には、使用するメンバーにとってより正確かつ効率的な意思伝達をするためのものがある一方で、むしろ意味を曖昧にするために使うフレーズもあります。「Let's table that(この議題はいったん保留に)」「take it offline(その件は後で個別に話しましょう)」というフレーズは、どちらもやんわりと断る雰囲気を出すときに使われます。また、「firing(解雇)」と伝えるよりは、「restructuring(組織再編)」と伝えることの方が多く、これも直接的な言い方を避けてるケースのひとつです。


ビジネス用語が使われる理由を総合して、「新しくて流行している分野で使われる用語を何でもすぐに取り入れるのと同時に、権力や地位を伝達するものとしての意味もあります」とブロゾフスキー氏は説明しています。言語学者は、フレーズの選択が話者間の力関係を表現する上で重要な役割を話していると考えています。専門用語を、その専門用語に詳しくない人の前で使うことで、自分が強力なグループに属していることを誇示することを目的とする場合もあります。実際に、「職場での地位が低い労働者ほど、経験や知識の不足を補おうとして専門用語を頻繁に使用する」ことを示した研究も存在しています。


そのため、若い世代を経るごとに濃縮されていくようにして、現代ではビジネス用語が頻繁に使われるようになっている可能性があります。ただし、その流れをZ世代が食い止める可能性があります。LinkedInが実施した2023年のビジネス用語に関する調査によると、1980年代から1990年代生まれのミレニアル世代はビジネス用語を最も多く使用している一方で、1990年代半ばから2010年代生まれのZ世代の60%はビジネス用語を完全に排除したいと考えていることが判明したそうです。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
「言語の絶滅」はどのように起こるのか、絶滅から回復することはできるのか? - GIGAZINE

世界の言語の数は話者が亡くなると減る一方のはずなのに実際は増えているというパラドックスの正体とは? - GIGAZINE

話す言語によって時間の感覚が変わるという研究結果 - GIGAZINE

言語の広がりや進化などを物理学者が力学的に分析する「言語物理学」とは? - GIGAZINE

「言語学の父」が生み出した文法の謎が2500年の時を経てついに解き明かされる - GIGAZINE

「言語の絶滅」はどのように起こるのか、絶滅から回復することはできるのか? - GIGAZINE

in 動画, Posted by log1e_dh

You can read the machine translated English article Why do companies use difficult-to-unders….