アメリカの一部の州では女性の平均寿命が1世紀にわたってほとんど変わっていない

アメリカは国民の健康状態がかなり悪いことが知られており、「最も裕福なアメリカ人でさえ一部のヨーロッパ諸国で最も貧しい人より短命」という研究結果も報告されています。新たな研究では、アメリカは州ごとに平均寿命の増加に大きな格差があり、一部の州では女性の平均寿命が1世紀にわたりほとんど増えていないことが明らかになりました。
All-Cause Mortality and Life Expectancy by Birth Cohort Across US States | Public Health | JAMA Network Open | JAMA Network
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2833159

Study Reveals Stark Differences in Life Expectancy Across U.S. States Over the Past Century < Yale School of Public Health
https://ysph.yale.edu/news-article/study-reveals-stark-differences-in-life-expectancy-across-us-states-over-the-past-century/
Life Expectancy Has Barely Changed in Some US States For More Than a Century : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/life-expectancy-has-barely-changed-in-some-us-states-for-more-than-a-century
イェール大学公衆衛生大学院が主導した大規模な研究では、1969年~2020年にかけてアメリカで死亡した1億7900万人分のデータを分析し、同じ年代に生まれた集団(出生コホート)ごとの平均寿命を調べました。そして、1900年生まれの人々から2000年生まれの人々にかけて、アメリカの各州における平均寿命がどれほど変化したのかを推定しました。
論文の筆頭著者であり、イェール大学公衆衛生大学院の生物統計学教授のセオドア・ホルフォード博士は、「出生コホートごとに死亡率の傾向を見ると、集団の生きた経験をより正確に反映することができます。これは、集団の人生に影響を与える政策や社会状況の長期的な影響を示します。これらの影響は、異なる世代の死亡率を年ごとに比較することでは見えてこないかもしれません」と述べています。

分析の結果、1900年生まれと比較すると2000年生まれのコホートは平均寿命が軒並み延びましたが、その程度には州ごとに大きな格差がみられました。アメリカ北東部および西部の州では平均寿命が大きく増加した一方、南部の州では平均寿命の増加がわずかなものにとどまっており、特に一部の州では1世紀にわたりほとんど変化していないと報告されています。
以下のグラフは、「2000年生まれの男性の平均寿命が最も長い/最も短い5州」について、1900年生まれと2000年生まれの平均寿命を比較したもの。2000年生まれの男性の平均寿命が長いニューヨーク州・カリフォルニア州・ワシントンD.C.・マサチューセッツ州・ワシントン州では、1900年と比較して30年以上も平均寿命が延びていることがわかります。特にワシントンD.C.の平均寿命増加は目覚ましく、1900年生まれは48.7歳だったのが2000年には86.5歳となっています。つまり、1世紀で約38年も平均寿命が延びたというわけです。一方、男性の平均寿命が短いミシシッピ州・ウェストバージニア州・アラバマ州・ルイジアナ州・テネシー州では、平均寿命の増加が10年程度にとどまっています。

女性の場合はさらに顕著な格差がみられます。以下のグラフは、「2000年生まれの女性の平均寿命が最も長い/最も短い5州」について、1900年生まれと2000年生まれの平均寿命を比較したものです。2000年生まれの女性の平均寿命が最も長い州はワシントンD.C.・ニューヨーク州・カリフォルニア州・マサチューセッツ州・ハワイ州で、ワシントンD.C.は約29年も平均寿命が延びていることがわかります。1900年の時点で平均寿命が長かったマサチューセッツ州やハワイ州では増加率が少なめですが、それでも13年以上平均寿命が延びています。一方、2000年生まれの女性の平均寿命が短いウェストバージニア州・オクラホマ州・ケンタッキー州・ミシシッピ州・アーカンソー州では、平均寿命は1900年から2000年にかけてほとんど変わっておらず、オクラホマ州ではなんと0.7年減少しています。

ホルフォード氏は、「南部の一部の州で生まれた女性の平均寿命は、1900年から2000年にかけて3年未満しか延びませんでした。ニューヨーク州やカリフォルニア州のような州では、同じ期間に平均寿命が20年以上延びたことを考えると、これは驚くほど対照的です」とコメントしています。
また、研究チームは「35歳以降に死亡率が増加する割合」についても調査しました。その結果は、死亡率の増加速度が速ければ速いほど老化による悪影響が大きく、遅ければ遅いほど健康的に老化していることを示しています。この調査でも地域差は明らかであり、ニューヨーク州やフロリダ州では死亡率の増加が緩やかだったのに対し、オクラホマ州やアイオワ州では死亡率の増加が速かったとのことです。
ホルフォード氏はこれらのパターンについて、「今日私たちが目にしている格差は、喫煙率・医療へのアクセス・環境への暴露・公衆衛生への投資など、数十年にわたる累積的な影響の結果です。意識的な政策変更がなければ、これらのギャップは持続するか、さらに広がる可能性が高いでしょう」と述べています。
また、論文の共著者であり、イェール大学公衆衛生大学院の医療政策学の助教を務めるジェイミー・タム博士は、「たとえば、平均寿命の改善が少ない州ほど貧困率が高いのは驚くべきことではありません」と述べ、死亡率と平均寿命の傾向は基礎となる人口統計も反映したものだと指摘。その上でタム氏は、「健康介入の利点は、生涯にわたります。早期に行動して公衆衛生に投資しないことは、将来の世代にも害を及ぼします」と主張しました。
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in サイエンス, Posted by log1h_ik
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