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学生がChatGPTを使いすぎると成績とモチベーションが低下するとの研究結果


ChatGPTのような生成AIは、学習の効率を高めるツールとして期待されている反面、宿題の丸投げやテスト中のカンニングなど、勉学を妨げる使われ方をすることもあります。情報処理国際連合の教育技術委員会が刊行する学術雑誌「Education and Information Technologies」に掲載された論文で、誠実な性格特性を持つ学生はAIの利用頻度が低いことや、課題にAIを使うとモチベーションや成績に影響が出る可能性があることが報告されました。

Personality correlates of academic use of generative artificial intelligence and its outcomes: does fairness matter? | Education and Information Technologies
https://link.springer.com/article/10.1007/s10639-025-13489-6

Too much ChatGPT? Study ties AI reliance to lower grades and motivation
https://www.psypost.org/too-much-chatgpt-study-ties-ai-reliance-to-lower-grades-and-motivation/

イギリスの大学生のほぼ全員が生成AIを使っているとの調査結果もあるほど、AIは学生の間で広く普及していますが、その使い方は一様ではありません。過去の研究では、責任感があり、時間を厳守し、授業への参加が積極的な学生ほど、AIツールへの依存度が低い傾向が示されています。

こうした知見から着想を得たパキスタンの研究グループは、生成AIの利用傾向と学生の性格や成績の関係を調べるため、パキスタンの3つの大学に在籍する326人の学生を対象とした3つの調査を行いました。


1つ目の調査では、ビッグファイブと呼ばれる性格特性のうち誠実性、開放性、神経症傾向の3つに焦点を絞り、これらの性格と学業成績やテクノロジーの利用との関連性を調べました。また、2回目の調査では生成AIツール、特にChatGPTをどの程度の頻度で学業に使っているかを回答させたほか、最後の調査では学業上の自己効力感(学業で成功できると感じている程度)、学習性無力感(努力しても成功につながらないという信念)、そしてグレード・ポイント・アベレージ(GPA)を申告させました。

その結果、調査対象となった3つの性格特性のうち、誠実性のみがAIの利用と有意に関連しており、誠実性のスコアが高い学生は学業に生成AIを利用する可能性が低いことが確かめられました。これは、「誠実な人は自らの努力に頼ることを好み、近道を嫌う傾向がある」ということを示唆しており、誠実さと自主的な学習との関連性を示した先行研究を裏付けるものです。


一方で、新しい技術を積極的に試す傾向がある開放性や、逆にそのようなツールの精度や倫理性の問題に不安や抵抗感を覚えがちな神経症傾向は、予想に反してAIの利用との間に有意な関係がありませんでした。

論文の責任著者であるパキスタンのShaheed Zulfikar Ali Bhutto科学技術院の助教のスンダス・アジーム氏は「私たちの研究で、誠実な学生は、おそらく自制心や倫理基準の高さにより、学業の課題に生成AIに頼る可能性が低いことがわかりました。彼らは、複数の情報源を探索したり、リサーチやディスカッションといった、より認知的に魅力的な学習活動を好んだりするのかもしれません」と話しました。


研究グループはまた、公平に成績が評価されていると感じるかどうかの認識が、性格特性とAIの使用の関係性にどう影響するかも分析しました。その結果、開放性と成績評価の公平性の認識のみがわずかに有意でした。具体的には、開放性が高い学生が成績評価システムを公平と認識すると、AIの利用率がわずかに低下しました。これに対し、誠実性や神経症傾向はあまり関係がありませんでした。

このことについて、アジーム氏は「成績評価の公平性が生成AIの利用にわずかにしか影響を与えず、しかもそれが開放性の性格特性にしか影響していなかったのは意外な発見でした。これは、生成AIが成績評価の公平性とは無関係に広く普及しつつあることを示しています。成績評価が不公平だと感じた学生は、より高い成績を得るために生成AIツールに頼るようになるだろうと予想されていたことを踏まえると、この結果は示唆に富んでいます。また、一般的に開放性が高い人はいち早くテクノロジーを導入しますが、今回の研究ではそのような結果は報告されませんでした」と述べました。

さらなる分析では、AIの利用の増加がいくつかの悪影響と関連していることが突き止められました。例えば、AIへの依存度が高い学生は、学業における自己効力感が低いと報告しており、これは学生が自分の力で成功することは難しいと感じていることを意味しています。また、AIへの依存度は学習性無力感、つまり努力は無駄であり、自分の力で結果をコントロールすることはできないと考える傾向とも関連していることがわかりました。さらに、AIの利用増加はGPAで測定された学業成績の若干の低下と関連していました。

こうした傾向は、生成AIの使いすぎが学生の主体性を損ない、授業に深く関わる意欲を低下させる可能性があることを示唆しています。

アジーム氏は研究全体を振り返って、「私たちの研究は、生成AIが学生に及ぼす潜在的な悪影響について警鐘を鳴らしていますが、その一方で生成AIが肯定的な成果につながることを裏付ける文献もあります。AIツールが教育にますます浸透するにつれ、政策立案者、教育者、そしてエドテック(EdTech)開発者は、生成AIを良いか悪いかの二元論で見ることから脱却することが求められるでしょう。私たちは、リスクを軽減しながら責任ある生成AIの利用方法を模索することが、学びの質を向上させる鍵となると信じています」と述べました。

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in ソフトウェア,   サイエンス, Posted by log1l_ks

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