ストリーミングとダウンロードの違いとは何なのか？

NetflixやYouTubeなどの動画ストリーミングサービスが当たり前になり、誰もがスマートフォンやPCでさまざまな動画をいつでもどこでも見られるようになりました。この「ストリーミング」という言葉は「ダウンロード」とどう異なるのかについて、Automatticの元エンジニアであるDan Q氏が解説しています。

The Difference Between Downloading and Streaming – Dan Q
https://danq.me/2025/05/26/downloading-vs-streaming/

ストリーミングとダウンロードは多くのプラットフォームでは大きく異なるものとして扱われていますが、技術的には大きな違いはありません。どちらの場合も、サーバーがビデオなどのメディアのフレームを取得し、ユーザーのデバイスに送信し、デバイスはそれらを処理する間は一時的に保存します。根本的な違いは、「デバイスがこれらのフレームをどう扱うか」という点にあります。一度表示して破棄する場合は「ストリーミング」、ビデオファイルとして再構築して保存する場合は「ダウンロード」と呼ばれます。

YouTubeなどでストリーミング再生する場合では、再生中の箇所の前後にある程度のフレームがバッファとしてコンピュータに保持されています。このバッファリングにより、通信状況が不安定な場合でも再生が途切れにくくなります。つまり、全てのストリーミングは実際にはダウンロードといえます。ただし、以下のアニメーションのように、「バッファに保存されたフレームを削除するかファイルとして保持するか」の違いがストリーミングとダウンロードを区別します。


ストリーミングとダウンロードは完全に同一というわけではなく、ほかにもいくつかの違いがあります。たとえば、ダウンロードは任意の順序でデータを受信できますが、ストリーミングは通常、メディアを時系列順に送信する必要があります。

また、ストリーミングされるメディアは、受信側の接続速度やデバイスの対応形式に合わせて、動的に品質が変更されたり、その場で変換されたりする可能性が高くなります。一方で、ダウンロードの場合は、通常、最初から最高品質のものが選択されるか、ユーザーが事前に品質を選択します。

そして、NetflixやHuluなどの有料ストリーミングメディアはDRM(デジタル著作権管理)によってコンテンツを保護しているとDan Q氏は指摘しています。これは、ユーザーがストリーミングされたメディアのコピーを保持することを防ぐためのものです。

例えば、Netflixなどが4Kストリームに使用するHDCP(High-bandwidth Digital Content Protection)という技術があります。この技術で保護されたストリームを再生するには、ユーザーのデバイスが特定の復号用コードを実行しなければなりません。そのコードは、HDCPに対応したモニターやテレビへの経路を追跡でき、かつデバイスとスクリーンの両方が映像を表示するだけで保存しないことを約束する場合にのみ機能します。対応ライセンスと復号キーは「Digital Content Protection LLC」という団体のみがモニターの製造業者に供与しています。

by Kai Hendry

しかしDan Q氏は「このようなDRM技術は多くの場合、公開後すぐに破られてしまう」と指摘。その結果、正規の有料ユーザーが外部モニターで映画を視聴できないといった不利益を被る一方で、海賊版コピーは問題なく様々なデバイスで動作するという状況が生まれることがあります。そのため、Dan Q氏は、DRMによって誰も得をしていないのではないかと疑問を呈しています。

また、HDCPで保護されたストリーミングコンテンツであっても、実際にはHDMIスプリッターのような安価な機器とキャプチャカードを使用することで「ダウンロード」できてしまう可能性があります。結局のところ、高度なDRM戦略が用いられている場合でも、多くは別の方法でコピーされており、DRMの負担によって苦しむのは合法的なユーザーだけであるとDan Q氏は述べました。