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フロム・ソフトウェアの対戦ロボットゲーム「クロムハウンズ」がエミュレーターで15年ぶりにオンラインに、無職になってクロムハウンズ復活に全力投球した制作者が裏話を語る


ロボットアクションシューティングゲームの「クロムハウンズ」は、2022年のGame of the Yearを受賞した「ELDEN RING(エルデンリング)」などで知られるフロム・ソフトウェアが開発し、2006年6月29日に発売したXbox 360用ゲームです。2010年にサービスが終了したクロムハウンズの再開を目指して活動しているゲームコミュニティに、エミュレーター関連のニュースを扱うRead Only Memoがインタビューを行いました。

Interview: 15 years after the servers shut down, FromSoft's singular mech game Chromehounds is back online
https://www.readonlymemo.com/interview-15-years-after-the-servers-shut-down-fromsofts-singular-mech-game-chromehounds-is-back-online/

ゲームフォーラム・ResetEraのユーザーであるwwm0nkey氏は2025年5月21日に、Xbox 360エミュレーター「Xenia」でクロムハウンズのオンラインプレイを再開させる作業が進んでいることを、フォーラムのメンバーに報告しました。


2006年にリリースされたクロムハウンズは、最大6対6のマルチプレイヤー対戦を中心とした3Dアクションシューティングゲームです。カスタマイズ可能なロボットを操作する点では、同じフロム・ソフトウェアの作品である「アーマード・コア」シリーズと共通しているところがありますが、個々の戦闘よりチームワークによる戦略に比重を置いたゲーム性やゲームスピードなどが異なっており、2010年にオンラインサービスが終了した際には熱心なファンに惜しまれたとのこと。

Read Only Memoは「フロム・ソフトウェアのゲームにはよくあることですが、この作品は『生まれる時代と場所を間違えてしまった』と言っていいでしょう。もし2025年にSteamで出ていれば、かなりのヒット作になるはずです」と評しています。


なお、ボイスチャットやチーム戦といったクロムハウンズの要素を継承した「アーマード・コアV」が2012年に、その続編の「アーマード・コア ヴァーディクトデイ」が2013年にリリースされましたが、それまでのアーマード・コアとは大きく違ったゲーム性に対するファンの評価は分かれました。そして、その後シリーズは2023年に「アーマード・コアVI ファイアーズオブルビコン」がリリースされるまで約10年にわたって新規タイトルが途絶えることになります。

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一方で、2020年にPCでリリースされた「Phasmophobia」や2023年の「Lethal Company」といったマルチプレイヤーゲームが成功を収めることで、コミュニティの間でクロムハウンズ復活の機運が高まっていくことになりました。

こうした中、「モッダー(modder)」と呼ばれるゲーム改造者のImagineBeingAtComputers(IBAC)氏が2023年に、「OpenCOMBAS」というDiscordサーバーを立ち上げて、クロムハウンズのエミュレーター版の開発を発表しました。しかし、それから1年が経過した2024年に開発が手詰まりになり、IBAC氏はDiscordに「ゲームのオンラインマルチプレイヤーを復活させる方法がさっぱりわからないので、行き詰まっています」と投稿しました

これにより、IBAC氏によるエミュレーター版クロムハウンズの開発は停止してしまいましたが、Discordサーバーに集まったメンバーが知識やデータを持ち寄ってIBAC氏に力を貸したおかげで、思いがけず突破口が開けたとのこと。

その時のことを、IBAC氏は「本当に感動的でしたが、心の準備ができていませんでした。Xbox 360エミュレーターのXeniaの現状を踏まえて、『稼働させるにはあと5~6カ月かかるだろう』と心の中で計画を立てていましたが、準備もなにもできていないのに、すべてが一気にうまくいくとは思っていませんでした。あるDiscordのボイスチャンネルの1つをふと見てみると、50人くらいの人がそれぞれの体験を話していて、Facebookグループでも話題になっていましたし、ゲームプレイを録画している人もいました。いろいろなことが目まぐるしく展開していて、こんなに多くの人が15年前に時計の針を戻して友だちと遊んでいるのを見るのは、本当に素晴らしい経験でした」と振り返っています。


クロムハウンズが復活に向けて大きく前進したのには、2つの要素が関係しています。1つ目は、Xbox 360エミュレーターの実験ビルドから派生したオンラインマルチプレイヤー用フォークの「Xenia Canary Netplay」です。これは、プログラマーのエイドリアン・カサール氏が中心となって開発を続けているもので、LANやエミュレートされたXbox Liveでマルチプレイできる400以上のゲームタイトルをサポートしています。IBAC氏がクロムハウンズのオンラインマルチプレイの仕組みを理解し、ネットワーク対戦用のサーバー環境を再現できたのは、このエミュレーターがあったからだとのこと。

しかし、IBAC氏が開発を続けていたエミュレーター版クロムハウンズはネットワーク対戦ができず、原作で行われていた「ネーロイムス戦争」を再現することもできませんでした。ネーロイムス戦争とは、プレイヤーが作中に登場する3つの国家に所属し、他のプレイヤーとチームを組んで所属国家を勝利に導くゲームモードのことで、「フォートナイト」などのマルチプレイヤーゲームの「シーズン」に相当します。

IBAC氏は1年近くリバースエンジニアリングを続けましたが、ソフトウェアがサーバーとどうやって通信しているのかがわからず、前述の通り開発は暗礁に乗り上げました。そんな時に、Discordメンバーの1人が対戦モードのゲームバランスなどを収録した重要なファイルである「レギュレーションファイル」の入手に成功し、対戦サーバーをどのように運営するかの理解が一気に深まりました。これが、クロムハウンズの復活につながる2つ目の要素です。

2025年5月21日には、IBAC氏とwwm0nkey氏による1対1での対戦が成功し、多数のプレイヤーが参加する「ネーロイムス戦争」の再開や、クロムハウンズのネットワークプレイの重要な要素であるボイスチャットの再現に向けた取り組みも進められているとのこと。


エミュレーター版クロムハウンズの開発にのめり込むあまり会社を解雇されてしまったというIBAC氏は、「ある日の夜には12人くらいがロビーに集まって盛り上がっていましたが、それは突然2009年にタイムスリップして、15年間待ち望んでいたゲームを当時のままプレイしていたかのようで、私は夢がかなったような気分でした。ちょうど前日に仕事をクビになっていましたが、心のどこかで『少なくとも、辞表を提出する手間が省けたおかげで、これからはクロムハウンズを24時間365日プレイできるぞ』と思っていました」と話しました。

なお、IBAC氏らがネットワーク対戦をテストしている様子は、以下から見ることができます。

OpenCOMBAS: Chromehounds Photoshoot 2025 - YouTube

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in 動画,   ゲーム, Posted by log1l_ks

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