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「ヴァイキング」に関するほぼ完全に間違った7つの神話


北欧を中心に世界の広い範囲で活動の痕跡を残したヴァイキングは、角がある兜と斧で武装した凶暴な海賊としてよく映画や漫画、ゲームなどに登場しますが、考古学ではこうしたイメージの多くが後世の創作によるものであり、ヴァイキングの実態の一部しか反映していないことがわかっています。そうしたヴァイキングにまつわる不正確な仮説や逸話を、科学系ニュースサイトのLive Scienceが7つ選んでまとめました。

7 myths about the Vikings that are (almost) totally false | Live Science
https://www.livescience.com/archaeology/vikings/myths-about-the-vikings-that-are-almost-totally-false

◆誤解1:ヴァイキングは角や翼がついたヘルメットをかぶっていた
ヴァイキングの象徴にもなっている角や翼がついた兜のアイデアは、19世紀のドイツ人画家兼デザイナーであるカール・エミール・デープラーが原案です。リヒャルト・ワーグナーの叙事詩オペラ「ニーベルングの指環」の衣装のデザインを担当したデープラーは、作中に登場する北欧神話の神のヴォータン(オーディン)を、翼のある兜をかぶった人物として表現し、このモチーフが後世の絵画や映画にも受け継がれていきました。


1942年には、デンマークで角のある儀式用の兜が出土していますが、この兜はヴァイキングの時代より1000年以上前の紀元前900年頃のものだといわれています。

by Lennart Larsen, Nationalmuseet

◆誤解2:ヴァイキングは「血のワシ」で敵を処刑した
血のワシは、中世スカンジナビアの文献に見られる処刑法で、生きたまま犠牲者のあばら骨を背骨から切り離し、肺を引きずり出してワシの翼のように広げるという残酷なものです。

北欧に伝わるサガには、血のワシによる処刑の記述が2件ありますが、専門家は誇張された描写の可能性があると考えており、実際に血のワシが行われたことを裏付ける考古学的証拠も存在しません。

by Berig

2022年に発表された論文によると、血のワシは解剖学的には不可能ではないものの、犠牲者は背中を切り開かれる早い段階で意識を失い、その後の失血か窒息ですぐに死亡したと考えられるとのこと。従って、仮に血のワシによる処刑が実際に行われたとしても、その処置のほとんどは死体に対して行われただろうと、研究者たちは結論づけています。

◆誤解3:ヴァイキングは単なる侵略者だった
Live Scienceによると、多くのヴァイキングが略奪を行ったことは否定できないものの、全員がそうだったわけではなく、中には熱心な交易商や果敢な探検家として活躍したヴァイキングもいたとのこと。

西暦800年~1050年ごろのヴァイキング時代の遺物には、アラビア半島の銀貨などが含まれており、このことはヴァイキングの交易網がビザンチン帝国からイギリス諸島まで広がっていたことを示しています。また、カナダのニューファンドランド島では、ヴァイキングの入植跡地であるランス・オ・メドーの遺跡が見つかっており、これはヴァイキングがコロンブスより500年近く前の西暦1000年頃にアメリカ大陸の一部に到達していたことを意味しています。


交易商としてのヴァイキングは、毛皮やセイウチの牙、コハクなどの品々で有名で、現代の歴史家の中には「ヴァイキングにとって、経済的・文化的な拡大は略奪や奴隷の獲得と同じくらい重要だった」と唱える人もいます。

◆誤解4:ヴァイキングは粗暴だった
現代人の基準に当てはめると、ヴァイキングが暴力的だったのは紛れもない事実です。特に、西暦793年に起きたヴァイキングによるリンディスファーン島の襲撃事件はキリスト教社会を震え上がらせ、暴力的なヴァイキングの悪名が歴史に刻まれるきっかけとなりました。しかし、当時のヨーロッパ社会の多くは同様に暴力的であり、戦争や虐殺もよくあることだったため、ヴァイキングが他の民族に比べて異常に暴力的だったということにはならないと、Live Scienceは指摘しています。


◆誤解5:ヴァイキングは金髪だった
「ヴァイキングは北欧の民族」というイメージから、青い目をした金髪のヴァイキングを思い浮かべる人が多いかもしれませんが、ヴァイキングは民族集団というよりは文化で結びついた集団でした。例えば、2020年に発表された研究では、ヴァイキングの墓から出土した遺骨や歯など442人分のDNAが分析され、その結果からヴァイキングは人種的に均一ではなく、外見も茶髪や黒髪など多様だったことが判明しています。


◆誤解6:ヴァイキングは臭かった
ヴァイキングというと、不潔でむさ苦しい戦士というイメージが一般的ですが、現実のヴァイキングは当時としては非常に清潔できれい好きだったことが知られています。事実、ヴァイキングの墓から出土した遺物の中には、くしやピンセット、耳かきなどの身だしなみ用品があるほか、当時の器の破片からは、ヴァイキングが石けんを頻繁に使っていたことがわかっています。

また、アラブの探検家のアフマド・イブン・ファドラーンは、921年の見聞録に、東スラヴ地域のルーシに住むヴァイキングが「毎日体を洗っていた」と記していますが、当時ほとんどの地域では入浴が一般的ではなかったため、イブン・ファドラーンはヴァイキングの入浴習慣を奇習とみなしていました。


◆誤解7:ヴァイキングはキリスト教のおかげでおとなしくなった
キリスト教圏の間では、北欧神話の神々を崇拝していたヴァイキングの社会にキリスト教が広まったことで、ヴァイキングが文明的になったと信じられているとのこと。しかし、そのことを裏付ける考古学的な証拠はなく、イングランド南部で見つかった当時の集団墓地から得られた証拠は、キリスト教を信じるようになった後もヴァイキングが相変わらず血なまぐさい争いを行っていたことを物語っています。

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in メモ, Posted by log1l_ks

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