Appleが中国に依存し取り込まれている実態を暴露する「Apple in China」

Appleに関する報道で知られるビジネスジャーナリストのパトリック・マギー氏が、著書「Apple in China」の中で、Appleのティム・クックCEOがどのようにして中国への依存を深めていったのかを論じました。
Book Review: ‘Apple in China,’ by Patrick McGee - The New York Times
https://www.nytimes.com/2025/05/15/books/review/apple-in-china-patrick-mcgee.html
The Dark History of How China Captured Apple | Vanity Fair
https://www.vanityfair.com/news/story/apple-in-china-patrick-mcgee-interview
Appleは2008年以降、中国で2800万人以上の労働者を訓練してきたと発表しており、マギー氏によるとこれはカリフォルニア州の労働人口全体よりも大きな数字だとのこと。
また、Appleの中国への年間投資額は、バイデン政権がアメリカ国内の半導体生産を強化し、中国に対抗するために打ち出した「一世一代の投資」に充てた総額を上回り、ハードウェアの価値を含めるとその数字はさらに倍増すると、マギー氏は指摘しています。
「この急速な再編は、ベルリンの壁崩壊にも匹敵するような、技術とノウハウの一大移転という地政学的事件という意味合いを持っています」と、マギー氏は記しています。

by Sue Ream
Appleが中国に目を向けるようになったのは、1990年代半ばから後半にかけての中国の労働市場に横行していた、「低賃金、低福祉、低人権の魅力」に引きつけられたのが発端です。
当時の中国を視察したAppleのエンジニアは、広東省深センの工場を訪れた際に、「施設にはエレベーターがなく、場当たり的に作られた階段の段数は不規則で、1階から2階への階段は12段で、次の階へは18段、次は16段、次は24段という具合になっており、1段ごとの高さもまちまちだという有様に衝撃を受けた」と振り返ったとのこと。
その後、2000年代の転換期を迎えた中国の指導者たちは、世界貿易機関(WTO)加盟を目前に控え、外国投資家から学んだ輸出主導型経済の実現に向けて邁進するようになりました。台湾の大手サプライヤーであるFoxconnが、Apple製品を組み立てる中国人労働者のために大規模な居住区を建造したのもちょうどそのころです。こうして新調された組み立てラインで最初に生産されたのは、いわゆる「中国速度」で作られたiMacでした。
中国の労働者が大規模にApple製品を生産し始めてから10年以上が過ぎるころには、中国の消費者もApple製品を大量に購入するようになりました。当時の中国を取材していたあるジャーナリストは、「Appleが中国でやっていることが、Foxconnなどのサプライヤーから虐げられる労働者の物語へとすり替えられていることに歯がゆさを覚えました」と述べています。
当時、工場の寮の外には自殺防止用の網が張られており、賃金は低水準で、Apple自身も中国のサプライチェーンで深刻な労働搾取が行われていることを認識していたとのこと。

しかし、2010年代までに中国は大きく発展し、多くの中国人の生活は自由で豊かになりました。そして、それに伴って少なくとも中国の大都市部での暮らしはアメリカよりも進んだものとなっていきます。この中国の成功の象徴になったのが、中国で生産されるiPhoneでした。
ところが、習近平国家主席が権力を掌握すると、国営メディアがAppleの「西洋的な高慢さ」を標的としたキャンペーンを展開し始めるようになります。そして、それにおもねるかのように、Appleは中国のアプリストアからアメリカのニュースメディアのアプリを削除し、中国のユーザーデータをアメリカではなく中国国内に保管するよう指示する中国政府の要求に応じました。さらに、中国政府が労働権擁護の取り組みを厳しく取り締まるようになると、Appleのサプライチェーンに対する監査もほとんど行われなくなりました。
こうして2015年を迎えると、Appleは中国への法人投資額で最大手となり、内部文書によると当時の年間投資額は約550億ドル(約8兆円)に上っていました。これは、クックCEOが中国メディアに語った「Appleは中国で約500万人分の雇用を創出しました」という言葉にも表れています。
Appleが中国依存を深める中、中国もAppleをあてにするようになりました。マギー氏によると、中国政府が2015年に発表した、2025年までに中国を製造業強国に発展させることを目指すロードマップ「中国製造2025」の成否は、「自主イノベーションの大量促進者」としてのAppleが頼みの綱だったとのこと。
中国は経済的にも技術的にもAppleを最大限活用しており、マギー氏は「Appleがマルチタッチガラスの製造方法や、iPhone内の1000を超える部品を完璧に組み上げる方法をサプライチェーンに教えるそばから、Appleのサプライヤーはその技術をHuawei、Xiaomi、Vivo、Oppoといった中国企業に提供しました」と記しています。

「Apple in China」の中で、マギー氏はクックCEOを、本来であればサプライチェーンを中国外にも分散させるバックアッププランを進めるべき時に中国政府に追従したことで、期せずしてAppleを地政学的な泥沼のどん底に導いたリーダーとして描いています。
マギー氏は「ティム・クック氏は、財務面でおそらく過去20年間で最も成功したCEOでしょう。しかし、彼がどのようにしてAppleでこれほどの財務的成功を収めたのかを知れば知るほど、Appleの経営パラダイム全体に疑問を抱くようになるはずです」と述べました。
一方、Appleはメディアの声明で、「『Apple in China』には真実ではない点や、不正確な点が満載であり、事実確認も行われていません」と述べて、書籍の内容を否定しました。
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in ハードウェア, Posted by log1l_ks
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