中国とロシアが「月面に原子炉を建設する覚書」に署名する、独自の月面基地に電力を供給する予定

現地時間の2025年5月8日、中国とロシアが「月面に原子力発電所を建設する覚書」に署名したことが報じられました。この原子力発電所は、中国とロシアが主導する月面基地「国際月面研究ステーション(ILRS)」に電力を供給するとのことです。
Roscosmos, CNSA sign memorandum of cooperation to build lunar power plant
https://interfax.com/newsroom/top-stories/111329/

China signs deal with Russia to build a power plant on the moon — potentially leaving the US in the dust | Live Science
https://www.livescience.com/space/the-moon/china-signs-deal-with-russia-to-build-a-power-plant-on-the-moon-potentially-leaving-the-us-in-the-dust
中国の宇宙開発機関である中国国家航天局とロシアの宇宙開発を担う国営企業のロスコスモスは、アメリカのNASAが計画するものとは別に、独自の月面基地であるILRSの建設を計画しています。
ロシアと中国が「国際科学月ステーション」の建設に合意、NASAの月軌道プラットフォームゲートウェイとは別の道を模索 - GIGAZINE

ILRSは月の南極に位置する恒久的な有人月面基地であり、これまでにエジプト・パキスタン・ベネズエラ・タイ・南アフリカなど17カ国が参加を表明しています。ILRSの基礎は中国が2028年に予定している嫦娥8号ミッションによって築かれ、その後中国とロシアは2030年から2035年にかけて、超重量物打ち上げロケットで月面基地の部品を輸送する予定です。
そんなILRSに電力供給する方法として浮上したのが、月面に建設した原子力発電所です。2025年3月には当時ロスコスモスのCEOを務めていたユーリー・ボリソフ氏が、ロシアの国営通信社のタス通信に対し、中国とロシアは共同で月面原子力発電所を建設するプロジェクトを真剣に検討していると語っています。
中国とロシアの月面原子力発電所は2033年から2035年の間に建設される予定で、建設は人間の立ち会いなしで、自律的に行われる可能性が高いとのこと。ボリソフ氏によると、必要な技術的解決策はほぼ整っているそうです。
そして5月12日、中国国家航天局とロスコスモスが、月面の原子力発電所建設に関する覚書に署名したと報じられました。ロスコスモスは、「この覚書は、本日のウラジーミル・プーチン大統領と習近平国家主席との会談の成果に基づいて署名された文書リストに含まれています」と述べています。
ロスコスモスは、月面原子力発電所はILRSに対する重要な貢献になると主張。「ILRSは基礎的な宇宙研究を実施し、月面に人類が滞在することを見据えつつ、月面基地を長期無人運用するための技術もテストします」と述べました。

一方、宇宙開発で中国やロシアと競合するアメリカは、ドナルド・トランプ大統領の下で2025年5月に発表した2026年度予算案で、NASAのプログラム費用を前年度より60億ドル(約8800億円)も削減することを提案しています。
トランプ氏新年度予算案、NASA予算の60億ドル以上削減を提案 - Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-05-02/SVN355T0AFB500
新たな予算案では、月軌道上を周回する有人宇宙ステーションの「月軌道プラットフォームゲートウェイ」や、火星から岩石やちりのサンプルを持ち帰る「マーズ・サンプル・リターン」といったミッションは中止される方針となっています。
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in サイエンス, Posted by log1h_ik
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