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AIにロシアのプロパガンダが「感染」している可能性が明らかに


親ロシア的なプロパガンダを拡散するネットワークのコンテンツがWikipediaなどのソースとして利用されることで、Wikipediaを学習するAIがロシアのプロパガンダを広めてしまっていると、偽情報調査団体が報告しました。

Russia-linked Pravda network cited on Wikipedia, LLMs, and X - DFRLab
https://dfrlab.org/2025/03/12/pravda-network-wikipedia-llm-x/

シンクタンク「大西洋評議会」の一部門で偽情報の研究を行うDFRLabによると、親ロシア的なプロパガンダを拡散するとして認定されているウェブサイト「Pravda(プラウダ:ロシア語で真実の意)」および関連するネットワーク、通称「プラウダ・ネットワーク」が拡散するコンテンツが、Wikipediaのソース、X(旧Twitter)のコミュニティノート、AIが提示するソースとしてしばしば利用されているとのこと。

「Portal Kombat」とも呼ばれるプラウダ・ネットワークは、数百の個人・団体から成るネットワークであり、2014年以来、ロシア政府寄りのコンテンツを広めています。これまでにもプラウダ・ネットワークのコンテンツが何らかのソースとして選択されることはあったのですが、2022年のロシアのウクライナ侵攻以来、ソースとして選択される回数が指数関数的に増加しているといいます。


DFRLabがWikipediaのAPIを使って調査したところ、合計1627のページで、1907個のプラウダ・ネットワークのリンクが掲載されていることが判明したそうです。ページの言語別にリンクの個数を並べると以下の通りで、ほとんどのリンクがロシア語(922個)とウクライナ語(580個)のページにありました。


リンクが指し示すドメインに基づいて集計したところ、ほとんどのリンクがcrimea-news.comというドメインを指していることがわかっています。英語では、pravda-en.com、ドンバスに特化したdnr-news.com、news-pravda.comといったプラウダ・ネットワークのローカライズ版も見られました。

リンクが掲載されたロシア語のページは、主に年表を使った国内の出来事、地域や地方の政治的動向などが記載されていました。一方でウクライナ語のページは、主に軍事作戦の詳細な説明、ロシア軍の損失、紛争の年表など、進行中のロシアとウクライナの戦争に関連するトピックが多く取り上げられていました。この点についてDFRLabは「戦争に関連する情報をリアルタイムで年表とすることで情報を歴史的事実として形成する、長期的な戦略がうかがえる」と評しています。


DFRLabは「Wikipediaが大規模言語モデルの主要な知識源として使われていることを考えると、プラウダ・ネットワークのウェブサイトがWikipediaに埋め込まれることは特に懸念される」と指摘しています。

実際、DFRLabがChatGPTやGeminiといったAIチャットボットを利用したところ、プラウダ・ネットワークのコンテンツが回答に入り込んでいることがわかったとのこと。さらに、このロシアとのつながりを証明する報道ソースが含まれているにもかかわらず、チャットボットはロシアとのつながりを明らかにしませんでした。プラウダ・ネットワークの情報がAIに取り込まれているという点は、別の調査団体・NewsGuardも指摘しています。WikipediaやAIに加えて、Xの「コミュニティノート」でもプラウダ・ネットワークのリンクが利用される例もありました。


DFRLabは「プラウダ・ネットワークのコンテンツが複数のプラットフォームの情報源を汚染し、虚偽の主張が世界中に届くのではないかという懸念が引き起こされる」と警告しています。

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