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FacebookとInstagramからパレスチナ支持の投稿を削除するイスラエルの大規模キャンペーンの存在が明らかに


Metaの内部情報から、イスラエルに批判的な、あるいはパレスチナ人を漠然と支持しているようなInstagramやFacebookへの投稿に対し、イスラエル政府が大規模な削除要請を実施していることが明らかになりました。Metaは2023年10月7日以降、イスラエルから出された削除要請の94%に応じているらしいこともわかっています。

Leaked Data Reveals Massive Israeli Campaign to Remove Pro-Palestine Posts on Facebook and Instagram
https://www.dropsitenews.com/p/leaked-data-israeli-censorship-meta

イスラエルとパレスチナ両国の問題が発展し、2023年10月7日、パレスチナのガザ地区を実効支配する組織・ハマスとイスラエルの戦争が勃発しました。

Metaの内部告発者がニュースサイトのDrop Site Newsへ提供したという内部データによると、プラットフォーム上の安全性と信頼性を確保するためのMeta内の組織「Integrity Organization」が、イスラエル政府から寄せられた大量の削除要請を処理しているとのこと。


Metaはイスラエル政府から提出された削除要請に従うため、30秒で平均9万件以上の投稿を削除。さらに2023年10月7日以降、ユーザーの投稿を自動検閲する仕組みを大幅に拡大し、2023年後半から2025年にかけて、FacebookとInstagram全体で推定3880万件の投稿に対して削除あるいは抑制の措置を執ったとのことです。

2023年10月7日以降、イスラエル政府による削除要請の数は急増しました。


Metaは、ユーザーからの報告を受けて投稿を検閲する仕組みを設けているほか、「政府当局がFacebookまたはInstagram上のコンテンツが現地の法律に違反していると判断した場合、削除を要請できる」と規定しています。

Drop Site Newsによると、Metaの削除システムは、提出された報告を報告者によって異なる経路で処理するそうです。一般ユーザーは、プラットフォームに組み込まれた報告機能を使って投稿を報告し、Metaによるレビューを要請することができます。報告された投稿は通常、まずAIによって違反または非違反のラベルが付けられ、場合によっては人間のモデレーターがレビューすることがあります。AIが投稿に「違反」を示すスコアを割り当てた場合、投稿は自動的に削除され、反対にスコアが低い場合は人間のモデレーターがレビューしてから措置を講じるかどうかを決定するという仕組みです。

一方で、政府当局にはレビューを開始するための特権的な経路が与えられており、こうした経路で提出された報告には高い優先度が設定され、ほとんどの場合はAIではなく人間によってレビューされるそうです。こうしてレビューされた投稿はAIにフィードバックされ、AIは政府当局の要請を学習し、それに合わせてユーザーの投稿を自動で削除するようになるとのことです。

Integrity Organizationの関係者によると、MetaのAI自動モデレーションでMetaのポリシーに違反しているわけでもない親パレスチナ派のコンテンツが頻繁に削除されていることや、単に削除で済むはずの親パレスチナ派のコンテンツが「ストライク」の評価を受けていることもあったとのこと。ストライクは比較的深刻な投稿に付けられる評価で、1つのアカウントが多くのストライクを受けるとアカウントの削除措置が執られます。

人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチの独自調査によると、2023年10月7日以降、FacebookやInstagramで削除または規制された1050件の投稿のうち、1049件はパレスチナを支持する平和的な内容であり、イスラエルを支持する投稿はわずか1件であったとのことです。


Drop Site Newsによると、イスラエル政府の削除要請には、投稿内容にかかわらず全く同じ苦情文が含まれているとのこと。大抵はイスラエル政府が問題視する投稿のリンクが貼られ、「テロ行為を称賛し、テロ組織を特定または支援すること、および扇動することを禁止するイスラエル・テロ対策法に違反する。死者、負傷者、誘拐された人物の画像が含まれているため、描かれている人物を辱めるような状況での画像の公開を禁止するプライバシー保護法にも違反する」などと記載されているそうですが、こうした指摘は投稿内容にそぐわないものだといいます。

こうした処理が行われる背景に、Metaの内部構造があるとDrop Site Newsは指摘しています。Drop Site Newsによると、削除要請を処理するIntegrity Organizationは、イスラエル軍の諜報部隊に所属していた元イスラエル軍高官、ガイ・ローゼン氏が指揮しているほか、ベンヤミン・ネタニヤフ首相の元上級顧問でMetaの公共政策ディレクターを務めるジョーダナ・カトラー氏の介入も頻繁に行われているとのことで、組織自体がイスラエル寄りの体制になっている可能性があります。

情報筋によれば、Integrity Organization内部で親パレスチナ派のコンテンツに対する過剰な取り締まりに対する懸念が提起されたとき、指導部は「取り締まりが不十分で違反コンテンツが放置されるリスクを負うよりは、違反の可能性のあるコンテンツに対して過剰な取り締まりを行う方が良い」と答えたそうです。


内部データによると、イスラエル政府による削除要請はアラブやイスラム教徒の多い国のユーザーを多くターゲットにしており、影響を受けた国はエジプト、ヨルダン、パレスチナ、アルジェリアなど多数。ヒューマン・ライツ・ウォッチによると、合計60カ国以上のユーザーから、パレスチナに関連するコンテンツが検閲されたと報告されているといいます。注目すべきは、イスラエルの削除要請のうちイスラエルのユーザーを対象としたものはわずか1.3%に過ぎず、世界の他の国は自国民を対象とした検閲に力を入れているのと比べてイスラエルが異例ということです。

Drop Site Newsは「イスラエルは、世界的にみて削除要請の最大の発信国であり、Metaもそれに追随して自動削除の網を広げており、現代史上最大の大量検閲作戦と呼べるものを作り上げている」と指摘しました。

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