超音波を交差して特定の場所へ人間に聞こえる音を届ける技術が登場

人間の耳には聞こえない2種類の超音波を出し、音波を曲げて交差させ、交差地点だけに「聞こえる音」を届ける技術が開発されました。
Audible enclaves crafted by nonlinear self-bending ultrasonic beams | PNAS
https://www.pnas.org/doi/abs/10.1073/pnas.2408975122
Researchers created sound that can bend itself through space, reaching only your ear in a crowd
https://theconversation.com/researchers-created-sound-that-can-bend-itself-through-space-reaching-only-your-ear-in-a-crowd-252266
通常、2つの音波がぶつかると、音波は結合して大きな波となりますが、音波が十分に強ければ新しい周波数を発生させることができます。例えば、40kHzと39.5kHzのように、わずかに異なる周波数の2つの超音波ビームが重なると、その周波数の差である0.5kHz、つまり人間の可聴域内である500Hzで新たな音波が発生するとのこと。音が聞こえるのはビームが交差する部分だけで、その交差地点以外では人の耳に聞こえない音のままだそうです。
ペンシルバニア州立大学のJia-Xin Zhong氏らは、音波を操作する特殊な材料を利用し、超音波を曲げるという設計をしました。通常、音波は何かに遮られたり反射されたりしない限り、直進します。しかし、音響メタサーフェスと呼ばれる技術を利用することで、超音波ビームを曲げて進ませることができるとのこと。これにより、障害物を回避して特定の位置で交差させられる、湾曲した「音の道」を作り出すことができるそうです。
以下をクリックすると、超音波の交差地点と、交差地点の手前にいる人間の耳に音がどう聞こえるのかを示した動画を再生できます。
超音波の交差地点では、音がハッキリ聞こえます。

ところが、人間の左耳に当たる地点ではほんのわずかしか音が聞こえません。

右耳側に至っては全く聞こえず。

この技術を応用することで、プライベートな音声通信を実現したり、公共の場所で特定の人にだけ聞こえる音楽を流したりすることが可能です。Zhong氏らは具体例として「美術館や博物館で、ヘッドホンを使用せずに音声ガイドを再生する」「図書館で、他の人に迷惑をかけることなく学生に対する講義を行う」といったことを挙げました。
Zhong氏らは「エンターテイメント、コミュニケーション、空間オーディオ体験が一変する可能性があります」と話しました。
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in サイエンス, Posted by log1p_kr
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