トランプ政権に移行してアメリカ国立衛生研究所の助成金が前年比で4500億円以上も減っていることが明らかに

2025年1月20日に第47代アメリカ合衆国大統領にドナルド・トランプ氏が就任して以来、アメリカ政府は保健福祉省公衆衛生局の下にある医学研究機関であるアメリカ国立衛生研究所(NIH)の科学者に対して、外部への情報発信停止や雇用の凍結、出張の中止といった命令を出しています。The Washington Postの分析によると、トランプ政権発足以降、NIH助成金は明らかに減少しており、その額は30億ドル(約4500億円)以上だそうです。
Trump promised scientific breakthroughs. Researchers say he’s breaking science. - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/politics/2025/03/28/trump-administration-science-research-cuts/
Report: US scientists lost $3 billion in NIH grants since Trump took office - Ars Technica
https://arstechnica.com/health/2025/03/report-us-scientists-lost-3-billion-in-nih-grants-since-trump-took-office/

The Washington Postによると、NIHがアメリカの研究者向けに提供してきた新規助成金および競争的助成金は、2024年1~3月で10億2700万ドル(約1540億円)に達していましたが、2025年は1~3月時点でわずか4億ドル(約600億円)にしか満たないそうです。さらに、競争のない助成金は2024年1~3月時点では45億ドル(約6750億円)だったのに対して、2025年は1~3月時点でわずか20億ドル(約3000億円)にしか達していない模様。つまり、NIHは2025年3月時点で科学者に提供する助成金を、前年比で30億ドル以上も減少させているというわけです。
NIHの助成金を受けている研究分野としては、がん治療、糖尿病、アルツハイマー病、ワクチン、メンタルヘルス、トランスジェンダーの健康などがあり、これらに対して提供されてきた助成金が、前年比で60%も減少しているそうです。

海外メディアのArs Technicaは、「NIHの助成金はアメリカにおける生物医学研究の主な資金源です。NIH助成金は、全50州の2500を超える大学、医学部、その他研究機関の30万人を超える科学者を支援しています」と指摘しています。
助成金が不足すれば、短期的には臨床試験を突然中止せざるを得なくなったり、科学プロジェクトを棚上げせざるを得なくなったり、物資の購入ができなくなったり、実験が実行できなくなったりします。しかし、長期的にみると科学の進歩と治療の遅れが発生することとなり、それが将来的にさまざまな影響をおよぼす可能性があるとArs Technicaは指摘。また、研究資金が減れば研究スタッフを維持したり、若い科学者を訓練したりすることが難しくなるとも指摘しました。
なお、資金面での不確実性を考慮し、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の生物工学教授であるディノ・ディ・カルロ氏は、20年ぶりに自身の研究室に加わる新たな博士課程の学生を募集しないことに決めたとThe Washington Postに語りました。カルロ氏は「私は業界諮問委員会と話し、5年後には、企業に採用できる生物工学博士課程の学生が50%減少するだろうと伝えています」とも語っています。

匿名を条件にThe Washington PostにコメントしたNIHの上級職員は、「30年前の乳がん研究ブームの時にこれが起こっていたらどうなっていたか想像してみてください。当時は乳がんのサブタイプを特定し、標的を絞った治療法を見つけるためのよりよい方法が見つかりました。(もしも乳がん研究ブーム時に助成金のカットが起きていたら、)現在乳がんで亡くなる女性はもっと多かったでしょう。前立腺がんも同様です。助成金を止めれば、将来的に治療法へのアクセスが減るという代償を支払うことになります」と語り、政府の助成金削減が将来的に大きな不利益をもたらすと主張しました。
なお、アメリカ政府はトランプ政権に移行してから、国家安全保障における重要な意味を持つ社会科学研究に資金提供するプログラムも廃止しています。
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