アルツハイマー病の薬を服用するとどれほど自立して暮らせる期間が長くなるのか?

アルツハイマー病は高齢者における認知機能低下の主な原因であり、病状が進行すると介護なしで生活を送ることができなくなってしまいます。そんなアルツハイマー病の治療薬として近年承認されたレカネマブとドナネマブについて、どれほど効果があるのかを調べた研究結果が発表されました。
Assessing the clinical meaningfulness of slowing CDR‐SB progression with disease‐modifying therapies for Alzheimer's disease - Hartz - 2025 - Alzheimer's & Dementia: Translational Research & Clinical Interventions - Wiley Online Library
https://alz-journals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/trc2.70033

Next-gen Alzheimer’s drugs extend independent living by months – WashU Medicine
https://medicine.washu.edu/news/next-gen-alzheimers-drugs-extend-independent-living-by-months/
Latest Alzheimer's Drugs Can Add Years of Independence to Patient Lives : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/latest-alzheimers-drugs-can-add-years-of-independence-to-patient-lives
アメリカ食品医薬品局(FDA)がレカネマブを承認したのは2023年、ドナネマブを承認したのは2024年のことであり、いずれも承認されて間もない治療薬です。
レカネマブもドナネマブも、アルツハイマー病に関連しているとされる脳内のアミロイドβを除去することで機能する薬剤であり、承認の際は一部のアルツハイマー病研究者から大きな歓迎を受けました。
しかし、FDAが臨床試験の結果を踏まえて承認したにもかかわらず、アルツハイマー病患者の中にはその効果がわかりにくいという声もあったとのこと。治療にあたる医師らによると、患者らは臨床試験で示された「認知機能低下率の減少」という結果が自分たちの生活にどう反映されるのか、理解するのが難しいと感じていたそうです。
レカネマブやドナネマブによる治療は高額であり、各週または毎月の点滴が必要なほか、脳浮腫などの副作用が出るケースもあります。そのため、治療による利点が明確でないと、患者が治療を始めることをためらってしまう可能性があるとのこと。
そこでアメリカのワシントン大学医学部の研究チームは、レカネマブとドナネマブの有効性をよりわかりやすく定量化するため、「薬を服用した場合にどれほど自立して暮らせる期間が長くなるのか?」を推定する研究を行いました。

ワシントン大学医学部の精神医学教授であるサラ・ハーツ氏は、「私たちがやろうとしていたのは、患者らにとって意味がある情報を提供し、自身のケアについて決める手助けする方法を見つけるためでした。人々が知りたいのは自立して生活できる期間であって、認知機能の低下率といった抽象的なことではありません」と述べています。
今回の研究では、アルツハイマー病患者が衰える2つのポイントとして、「料理や運転、請求書の支払い、予定の記憶といった日常的なタスクを管理する能力を失って自立できなくなった時」と、「自分の体のケアができなくなり入浴や着替え、排せつのために介護が必要になった時」に注目しています。
研究チームは、ワシントン大学が運営するアルツハイマー病研究センター・Knight Alzheimer Disease Research Centerに登録したアルツハイマー病患者282人を対象に、「治療をせずに放置した場合」「レカネマブあるいはドナネマブによる治療を行った場合」で、自立性を失ったり介護が必要になったりするポイントに達するまでの期間がどれほど違うのかを計算しました。

治療開始時点で非常に軽度の症状を持つ患者は、治療なしの場合は29カ月間にわたり「料理や運転、請求書の支払い、予定の記憶といった日常的なタスクを管理する能力」を持ち、自立して生活できるとのこと。計算の結果、もしドナネマブで治療した場合は自立して生活できる期間が37カ月に、レカネマブで治療した場合は39カ月に延びることがわかりました。
一方、治療開始時点で軽度の患者は、非常に軽度の患者と異なり最初から「料理や運転、請求書の支払い、予定の記憶といった日常的なタスクを管理する能力」を失い、すでに自立性がなくなっています。これらの患者について、ケアのための介護が必要になるまでの期間を調査したところ、ドナネマブで治療した場合は介護が必要になるまでの期間が19カ月、レカネマブの場合は26カ月長くなったとのことです。
ハーツ氏は、「この研究の目的は、これらの薬を擁護したり反対したりすることではありません。この論文の目的は、これらの薬の影響を文脈に当てはめ、人々が自分自身と家族にとって最善の決定を下すのを助けることです」と述べました。
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in サイエンス, Posted by log1h_ik
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