アメリカの上院議員が「DeepSeek禁止法」を計画、中国とのAIの輸出入を規制する新法が提出される

by Tim Reckmann
アメリカの共和党のジョシュ・ホーリー上院議員が、中国とのAI関連製品の輸出入や知的財産の取引を違法とする新法案「アメリカのAI機能を中国から切り離す法律(Decoupling America’s Artificial Intelligence Capabilities from China Act)」を議会に提出しました。これにより、中国のAI企業・DeepSeekのAIアプリをダウンロードすると罪に問われる可能性が浮上したと、IT系ニュースサイトの404 Mediaが報じています。
Hawley Introduces Legislation to Decouple American AI Development from Communist China - Josh Hawley
https://www.hawley.senate.gov/hawley-introduces-legislation-to-decouple-american-ai-development-from-communist-china/
Senator Hawley Proposes Jail Time for People Who Download DeepSeek
https://www.404media.co/senator-hawley-proposes-jail-time-for-people-who-download-deepseek/
Reacting to DeepSeek, US Senate bill would separate US and China efforts to develop AI | South China Morning Post
https://www.scmp.com/news/china/article/3296994/reacting-deepseek-us-senate-bill-would-separate-us-and-china-efforts-develop-ai
DeepSeekのAIは、OpenAIのモデルよりはるかに少ないコストで同等の性能を実現したオープンウェイトモデルとして取り沙汰されましたが、その後OpenAIの利用規約に違反する形でデータの蒸留を行っていたとの疑惑や、国際問題などに関するデリケートな質問に応えなかったり、中国政府に都合のいい回答を出力したりする実態が明らかになるにつれて、データ漏えいリスクが強く意識されるようになりました。
例えば、既にイタリアではiOSとAndroid向けのアプリストアからDeepSeekアプリが消えていることが判明しています。
DeepSeekアプリがイタリアのAppleとGoogleのアプリストアから消滅、イタリアのデータ保護局が個人データの使用についてDeepSeekに尋ねた直後 - GIGAZINE

さらに、ホーリー議員は2025年1月29日に「私たちはなぜ、Microsoftのようなアメリカのハイテク企業が、中国のDeepSeekのようなAI開発を手助けするのを容認しているのでしょうか?これは正気の沙汰ではありません。中国へのAI技術移転を直ちに禁止すべきです」と述べて、AI分野での中国との提携や投資を禁止する法案を提出したことを発表しました。
Why are we allowing American tech giants like Microsoft to help China develop DeepSeek and other AI? It’s insane. We should ban the transfer of AI technology to China immediately https://t.co/h4aSy7HFyb
— Josh Hawley (@HawleyMO) January 29, 2025
ホーリー議員は声明で、「中国のAIに流れるすべてのドルとギガのデータは、最終的にアメリカに向けて使われることになるドルとデータです。アメリカには、自国の力を犠牲にして最大の敵に塩を送る余裕はありません。アメリカの経済的優位性を確保することは、アメリカの創意工夫から中国を切り離し、中国共産党の技術革新を助長するのを停止することを意味しています」と述べました。
この新法は、中国のDeepSeekを念頭に置いたものであり、DeepSeekが国際的な懸念やアメリカのテクノロジー関連株の暴落を引き起こしたのを受けて提出されたものであると、声明には明記されています。
中国のAI「DeepSeek」ショックでハイテク株がパニック売りに、NVIDIAの時価総額が91兆円消し飛んで暴落記録を2倍以上更新 - GIGAZINE

法案の(PDFファイル)条文は、大きく分けて「中国とのAI技術の輸出入」「アメリカ企業が中国でAIの研究を行ったり、中国企業と提携したりすること」「アメリカ企業による中国のAI開発への投資」の3つを禁止しています。
もし法案が成立した場合、違反者は最長で20年間刑務所に収監されるか、または最大100万ドル(約1億5500万円)の罰金刑に直面するか、またはその両方を科せられるおそれがあり、DeepSeekアプリのような中国発のAIアプリのダウンロードも法律に抵触するおそれがあるとのこと。
アメリカの非営利団体・Center for Democracy & TechnologyのAIガバナンス担当上級顧問であるケビン・バンクストン氏は、404 Mediaに対して「この法律は、AIを巡る中国との科学的な協議や技術交流という概念そのものに対する広範な攻撃で、AI研究者とAIユーザーの両方に破滅的な罰則をもたらす可能性があり、ひいてはオンラインでの言論の自由や科学的探究の自由の将来に深刻な影響を及ぼすでしょう」と述べました。

ただし、この法案の提出はあくまで示威的なものであり、実現性は低いとの見方もあります。
ワシントンに拠点を置くコンサルティング会社・DGA Groupのパートナー兼中国担当上級ヴァイスプレジデントであるポール・トリオロ氏は、香港紙の取材に対し、ホーリー議員の法案はハイテク業界や他の議員からの大反対に遭うことが予想されると指摘した上で、「この提案は現実的ではなく、アメリカの企業や研究者が中国のAI事情に与える影響についての一連の誤解を反映しています」と述べました。
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in ソフトウェア, Posted by log1l_ks
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