道路陥没の解決につながる「自己修復するアスファルト」がGoogleのAIを活用して開発される

イギリスのスウォンジー大学とキングスカレッジロンドンの研究チームが、バイオマスとGoogle CloudのAIを活用して自己修復アスファルトを開発したという革新的な研究成果を報告しています。この研究は、イギリスで年間1億4350万ポンド(約277億円)のコストがかかる道路の陥没問題を解決することを目指しています。
How AI could make “self-healing” roads a reality
https://blog.google/around-the-globe/google-europe/united-kingdom/how-ai-could-make-self-healing-roads-a-reality/
AI-powered self-healing asphalt: A step toward sustainable net-zero roads - Swansea University
https://www.swansea.ac.uk/press-office/news-events/news/2025/02/ai-powered-self-healing-asphalt-a-step-toward-sustainable-net-zero-roads.php
この研究は、道路インフラの持続可能性と耐久性を革新的に向上させる取り組みとして注目されています。研究チームは、材料科学、化学、コンピュータサイエンスの専門家を結集させ、自然界の自己修復メカニズムを模倣した新しいアスファルト技術の開発に成功しました。
通常、アスファルトに含まれる歴青(ビチューメン)と呼ばれる粘着性の黒い物質が時間とともに酸化して硬化し、その結果としてひび割れが発生します。
この問題に対処するため、研究チームは髪の毛よりも小さなカプセルをアスファルトに組み込みました。このカプセルは、植物由来の多孔質材料でできており、内部にリサイクルされた油質の再生材が充填されています。

自己修復は、まずアスファルト内部にひび割れが発生することから始まります。このひび割れによる物理的な力が引き金となり、カプセルが破裂して内部の再生材を放出します。放出された再生材は硬化した歴青と化学反応を起こし、その柔軟性を回復させます。この化学反応によって歴青が柔らかくなることで、ひび割れ部分が「縫い合わされる」ように修復されるというわけです。

研究チームによれば、この全プロセスは1時間以内に完了し、アスファルトの構造的完全性を回復させるとのこと。この修復は人の手を介さず自動的に行われ、使用される材料が生物由来やリサイクル材であることから、環境負荷も低く抑えられています。
さらに、研究チームはGoogle Cloudと協力し、複雑な分子レベルでの解析を可能にする新しいデータ駆動モデルを開発したと述べています。このAIモデルは原子レベルのシミュレーションを加速し、歴青の酸化プロセスとひび割れ形成メカニズムの理解を深め、従来の計算モデルと比較してより高速でコスト効率の高い解析を可能にしました。

研究チームによれば、イギリスでは年間約2000万トンのアスファルトが生産されており、その生産過程は重要な炭素排出源となっているとのこと。研究チームは、この自己修復アスファルト技術が道路維持管理コストの削減だけでなく、イギリス政府が掲げる2050年までのゼロ排出目標達成に向けた重要な技術として位置づけており、実用化には産学官の連携が不可欠であると強調しています。
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in ソフトウェア, サイエンス, Posted by log1i_yk
You can read the machine translated English article 'Self-repairing asphalt' that will solve….