サイエンス

WHOが「減塩しお」への切り替えを推奨するガイドラインを発表、一体なぜ切り替えが必要なのか?


2025年1月27日、世界保健機関(WHO)が「塩」の代替品として低ナトリウム塩(減塩しお)を使用することを推奨する新たなガイドラインを発表しました。

Use of lower-sodium salt substitutes: WHO guideline
https://www.who.int/publications/i/item/9789240105591

Launch of the WHO guideline on the use of lower-sodium salt substitutes
https://www.who.int/news-room/events/detail/2025/01/27/default-calendar/launch-of-the-who-guideline-on-the-use-of-lower-sodium-salt-substitutes

Why the WHO has recommended switching to a healthier salt alternative
https://theconversation.com/why-the-who-has-recommended-switching-to-a-healthier-salt-alternative-248436

「塩分(塩化ナトリウム)の摂取は控えるべき」というアドバイスは目新しいものではありません。過剰な塩分摂取は高血圧のリスクを高めることが確認されており、オーストラリアでは成人の約3人に1人が高血圧であると推定されています。高血圧は心臓病・脳卒中・腎臓病のリスクを高めることが知られており、WHOの推定によると過剰な塩分摂取が原因で毎年世界中で190万人が死亡しているとのことです。

実際、1日の塩分摂取量をわずか「1g」減らすだけで脳卒中や心臓発作のリスクを軽減することができるという調査結果や、食事に塩を加える頻度が高いと寿命が縮むという研究結果が公表されてきました。

そして、塩を減塩しおに置き換えることで脳卒中などの発症率を抑えることができるという研究結果も発表されています。

食塩を「低ナトリウム塩」に置き換えると脳卒中などの発症率が下がるという研究結果 - GIGAZINE


WHOが新たに発表した減塩ガイドラインでは、1日のナトリウム摂取量を「2g」以下に抑えることが推奨されています。ただし、記事作成時点での成人の1日のナトリウム摂取量は「4.3g」程度であるため、半分以下に抑えなければいけないということになります。

2013年に開催された第66回世界保健総会において、WHO加盟国は2025年までに食塩摂取量を30%削減することで同意しました。しかし、食塩摂取量を削減することは非常に困難であることが明らかになっており、ほとんどの国が「食塩摂取量を30%削減」という目標を達成できていません。そのため、WHOは新ガイドラインの発表に際しても「2030年までに食塩摂取量を30%削減する」という同じ目標を設定しています。

栄養学の専門家であるルナ・スー氏と医学の専門家であるブルース・ニール氏は、「問題は、塩分摂取量を減らす、つまり塩分の少ない味を受け入れなければいけないということです。そうなれば従来の調理方法を変える必要もあります。これは日々料理する人々に求めるには過大な要求であり、食品業界にとっても過大な要求です」と指摘しました。


そこで注目されているのが、減塩しおというわけ。特に、「カリウム強化塩」と呼ばれる減塩しおが注目されており、これは塩化ナトリウムの一部を塩化カリウムに置き換えた塩です。カリウムは必須ミネラルのひとつで、体のすべての機能において重要な役割を担います。新鮮な果物や野菜にはカリウムが多く含まれており、それが「野菜が体に良い食べ物」とされる主な理由のひとつでもあります。現状、人は必要以上に多くのナトリウムを摂取していますが、カリウムを十分に摂取できていない人が多いため、この点からみてもカリウム強化塩は有望な代替塩であるとされている模様。

WHOは1日の推奨カリウム摂取量を「3.5g」としていますが、多くの人が推奨摂取量に達していないそうです。カリウムを豊富に含む塩は、摂取するナトリウムの量を減らし、食事中のカリウムの量を増やすことで、健康面においても良い効果を発揮します。さらに、血圧を下げることにもつながるため、ナトリウムの摂取量を減らすという点を除いても有効です。

世界中で行われた大規模な調査から、通常の塩をカリウム強化塩に切り替えると、心臓病・脳卒中・早死のリスクが軽減されることが実証されています。他にも、塩をカリウム強化塩に切り替えると、中国とインドだけで年間何十万人もの心血管疾患(心臓発作や脳卒中など)による死亡を防ぐことができると示されています


食塩の使用量を減らすのではなく、代替品に切り替えることの重要な利点は、カリウム強化塩を通常の塩と置き換えるだけで済むという点です。通常の塩の代わりにカリウム強化塩を使用しても、ほとんどの人は味に大きな違いを感じることはありません。実際、塩をカリウム強化塩に置き換える大規模実験では、塩からカリウム強化塩に切り替えてから5年後も、90%以上の被験者が依然としてカリウム強化塩を使用していたことが明らかになっています。

ただし、カリウム強化塩にもリスクはあります。例えば、腎臓病が進行している人はカリウムをうまく処理できないため、カリウム強化塩の使用は推奨されません。そのためカリウム強化塩には適切な警告ラベルを貼る必要があると、両氏は警告しました。


加えて、カリウム強化塩は通常の塩よりも高価です。カリウム強化塩は通常の塩よりも生産コストが高いため、主にニッチな健康食品としてプレミアム価格で販売されているとのこと。なお、2021年に発表された調査によると、減塩しおは世界の47カ国でのみ販売されており、そのほとんどが高所得国だそうです。

ただし、日本でも減塩しおは販売されており、例えば味の素の「やさしお」は、ナトリウムの一部をカリウムに置き換えたカリウム強化塩です。

Amazon.co.jp: 味の素 やさしお 180g【減塩】 : 食品・飲料・お酒
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000V6CR54/gigazine-22


他にも、塩化カリウム不使用で、通常の食塩と比べてナトリウムを50%削減した減塩しおの「ウレシオ」などもあります。ウレシオはレモンの酸味で塩味を引き立てた減塩しおです。

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in サイエンス,   , Posted by logu_ii

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