トランプ大統領がTikTokの禁止を一時停止した大統領令は議会法をくつがえせず運営企業を保護できない可能性がある

by Tupinicomics
トランプ大統領がTikTok禁止を75日間停止する大統領令に署名したものの、法的な効力を疑問視する声が上がっています。議会で可決され最高裁が支持した禁止法は既に発効しており、トランプ大統領の命令があってもアプリをホストあるいは配信する企業は違法状態に陥る可能性があります。
Trump signs executive order to halt TikTok ban - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/technology/2025/01/20/tiktok-trump-executive-order/
2024年4月24日、ジョー・バイデン前大統領はTikTokの親会社であるByteDanceに対してTikTokの売却を命じる「TikTok禁止法」案に署名しました。この禁止法が成立したことで、TikTokは2025年1月19日までにアメリカ企業に売却されなければ、サービスの提供とアプリの配布を禁止されることとなりました。
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しかし、トランプ大統領は2025年1月20日の就任直後に、TikTokの禁止を75日間停止することを目的とした大統領令に署名しました。この命令は司法省に対し、TikTokを提供する企業に対する法執行や罰則の適用を75日間にわたって行わないように指示するものです。命令の目的は「国家安全保障を守りながら、数百万人のアメリカ人が使用するコミュニケーションプラットフォームの突然の停止を避ける形で、適切に前進する方法を決定する」とされています。
トランプ大統領がこの大統領令を出すと発言したことで、TikTokは一部サービスを再開しています。
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しかし、このTikTok禁止法そのものを大統領が簡単に覆すことはできないだろうとThe Washington Postは指摘しています。
アメリカ大統領は法律の執行を担当する行政府の長として、法律の執行について一定の裁量権を持ちます。しかし、正式に成立した法律そのものを大統領令で無効にしたり覆したりする権限は持っていません。現状でTikTokを取り締まっているTikTok禁止法は、立法府であるアメリカ連邦議会が圧倒的多数で可決し、行政府の長であるバイデン前大統領が署名し、司法権を持つ最高裁判所が支持した法律です。つまり、大統領といえども単独で議会制定法を覆すことはできないという合衆国憲法の基本原則に基づく制約が、TikTok禁止法でも適用されることになります。
また、トランプ大統領は、アメリカとByteDanceによる合弁企業を提案しており、「TikTokは承認されれば大きな価値がある。承認されなければ価値はゼロだ。だから我々がその価値を作り出すなら、半分くらいの権利があってもいいのではないか」と述べ、アメリカがアプリを「監視する」役割を担う可能性があると付け加えています。
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しかし、The Washington Postによれば、禁止措置が既に発効している状況下ではトランプ大統領の発言に関係なく、アプリをホストあるいは配信する企業は違反状態となり、責任を問われる可能性があると指摘されているとのこと。
TikTok禁止法は「外国の敵対者による支配」を完全に排除することを要求しており、ByteDanceのような国外企業が部分的にも支配権を維持することを認めておらず、運営上の関係を持つことも禁止しています。そのため、トランプ大統領の合弁企業案はTikTok禁止法によって制限されてしまう可能性が高いといえます。
記事作成時点でのByteDanceの株は、General AtlanticやSusquehanna Internationalといったアメリカに本社を置く投資企業が60%を保有し、創業者と従業員で残りの40%を分け合って所有しています。提案されている合弁企業が実現すれば、TikTok禁止法を回避するためにByteDanceとその株主は自らが開発に貢献した企業の大部分の所有権を手放すことを余儀なくされます。

by Anthony Quintano
上院情報委員会委員長のトム・コットン上院議員は、トランプ大統領がTikTokに関する計画を詳述した後に、「企業は法律に基づいて数兆円規模の罰金を支払う責任に直面する可能性がある」と警告しています。また、そもそも法律で定められた期限は1月19日ですでに切れており、新たな延長は認められないと一部の法律専門家は主張しました。
中国政府は最近になって、以前の強硬な姿勢を軟化させ、アメリカでのTikTok運営維持に向けてトランプ政権との協力に前向きな姿勢を示していますが、具体的な合意の形態についてはまだ不透明な状況が続いているとThe Washington Postは指摘しました。
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in メモ, Posted by log1i_yk
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