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地球が太陽系からはじき出されてしまうと一体何が起こるのか?


地球の生きとし生けるもの全ては、空に浮かぶ「太陽」から光と熱という恩恵を受けて活動しています。地球に接近しているある巨大な星によって、地球が太陽系からはじき出されて太陽から遠く離れてしまうかもしれないという可能性について、科学系YouTubeチャンネルのKurzgesagtがアニメーションムービーで解説しています。

What If Earth got Kicked Out of the Solar System? Rogue Earth - YouTube


夜空は一見すると静かで、何も動きがないように見えます。しかし実際には、夜空に浮かぶ星々は時速数十万キロメートルという速度で銀河系を駆け抜けています。


こうした星々がどれほど地球にとって危険なのかを理解するためには、「引力」が重要です。引力は1000万光年離れた原子との間にさえ働いていますが、「相手との距離」と「相手の質量」に影響されるため、遠く離れた小さな物体から受ける引力からはほとんど影響を受けません。


一方で、太陽系の全質量の99.75%を占める太陽のような巨大な存在は、周りの物体全てに影響を与えます。


太陽が生まれてからおよそ数十億年ほどは、太陽系は無数の小惑星が渦巻く危険な空間でした。しかし、小惑星が地球などの惑星に衝突していった結果、太陽系には静寂が訪れました。


今ではほとんどの惑星と小惑星は、予測可能な軌道を離れることはありません。太陽系の予測可能な軌道は、内太陽系、外太陽系、アステロイドベルト(小惑星帯)カイパーベルトの4つの領域に区分されます。


さらに、カイパーベルトの外側にはオールトの雲と呼ばれる球殻状の天体群が存在していると考えられています。


もし巨大な星が太陽系に接近してきた場合、この星と太陽系の全天体の間で強い引力が生じます。


実際におよそ7万年前、ショルツ星と呼ばれる赤色矮星と褐色矮星の双子星がオールトの雲を通過し、星々をメチャクチャにしたことがあるそうです。


ショルツ星の影響で小惑星が地球に向けて飛来するようになった可能性もあります。しかし、一説にはショルツ星によって地球に飛来する小惑星が存在したとしても到着するのは700万年後になるとのことで、その影響はすぐにはわかりません。


さらに、ショルツ星のような巨大な星が接近してくるという事態は現在進行形で起きています。太陽の半分の質量を持つというグリーゼ710は、太陽系に迫っています。


グリーゼ710は100万年以内にオールトの雲に到達し、地球から見える星の中でも最も明るい星になる見込みです。


グリーゼ710はオールトの雲を何十万年にもわたって通過し、何百万個もの天体の軌道を大きくかき乱し、最悪の場合は地球に隕石が降り注ぐ事態が生じる可能性すらあると予想されています。


降り注ぐ隕石次第では、地球上の生物が大量絶滅することも考えられます。


しかし、隕石による大量絶滅ですら生ぬるいかも。グリーゼ710は、火星の公転軌道よりさらに太陽に近い領域である内太陽系に達する可能性があるといわれています。


太陽にグリーゼ710が衝突する可能性もありますが、「グリーゼ710が地球の公転軌道をゆがめる」という可能性も考えられます。例えば、「近傍を通過したグリーゼ710によって、地球が太陽系から飛び出してしまう」という事態が起こる確率は10万分の1、発生する時期は50億年以内と想定されており、絶対に起こり得ないとはいえない状況です。


というわけで、「グリーゼ710が近傍を通って地球が太陽系から飛び出した場合、地球上ではどのような変化が起こるのか?」を考えてみることにします。まずグリーゼ710が飛来してくる際には、夜空に浮かぶ巨大なオレンジ色の点が徐々に大きくなるという現象が発生。


このオレンジ色の光点は徐々に大きくなり、数カ月後には昼間でも目視可能な明るさに達します。


そのうちに月よりも明るくなり、直接肉眼で見られる明るさを超え、夜空は不気味な赤色の光で満たされます。


この現象は数カ月ほどで収束し、オレンジ色の光点は徐々に小さくなって見えなくなりますが……


数年後、今度は太陽が徐々に遠ざかるという事態が生じます。


太陽が遠ざかったことにより、地上は暗く、寒くなり、「永遠の冬」が始まります。


南極と北極の氷河は巨大化し、植物はしなびて死に、森は凍てつき、多数の動物が死に絶えます。


地球が火星の公転軌道を横切る頃には、地上の気温はマイナス50℃に到達。地球の見た目も凍り付いたように白く変わり果てます。


世界的なインフラは崩壊し、人類は建物の中で寄り集まって暮らすように。しかし、何を燃やして暖を取ろうとも、気温が上昇することは未来永劫あり得ません。植物や動物は死に絶えたので、そのうち食糧不足に陥ります。


木星の公転軌道に至る頃には、地球の気温はマイナス150℃を記録。マイナス150℃という気温は、有史以来地球上で記録されたことはありません。


いうまでもないことですが、この気温の中で生存できる人類はいません。


太陽による水の蒸発がなくなるため、水循環は停止し、全ての地表が氷に覆われます。海面の氷は分厚くなり続けて水の量が減るため、海中の塩分濃度が上昇し、ほとんど全ての水中生物も死に絶えます。生き残ることができるのは、地熱で熱された水が噴出する熱水噴出孔近辺の極限環境微生物のみ。


一方、はるか地中では内核の熱によってバクテリアが生き延びています。


地球がカイパーベルトに達してもなお太陽は地球から見える星の中でも最も明るい星の地位を保持していますが、その明るさも他の星と大差ないレベルに。そのころには、昼間でも星が瞬いている様子が見えるようになります。この頃の気温はあらゆる気体が凍り付くマイナス230℃に到達。


もはや観測してくれる人類は死に絶えて久しい状態ですが、大気が窒素で満たされ、その後酸素の雪が降るという奇妙な現象が地表で生じます。この現象が数年間続いた後、地表は10メートルの厚さの氷で覆われ、大気はほとんどなくなります。


太陽系からはじき出された地球は、自由浮遊惑星となって宇宙空間を孤独に漂い続けます。


このシナリオは絶望的に聞こえるかもしれませんが、希望もあります。グリーゼ710の接近は、地球に達する何千年も前から観測することが可能です。


仮にグリーゼ710を止められなかったとしても、地熱発電と原子力を使った巨大建造物の中で生き延びる可能性だってあり得ます。


地球が太陽系から脱する前に、他の惑星に移住することも選択肢の1つ。移住して数千年も経つ頃には、人類の子孫の中で地球時代が過去の伝説として語り継がれるようになるでしょう。

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in サイエンス,   動画, Posted by darkhorse_log

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